煉義

煉義

林檎甘いか酸っぱいか

「大荷物になってしまったな!」 快活に笑う煉獄の両手は、山ほどの野菜が盛られた籠でふさがっている。空はぶ厚い雲で覆われているが、煉獄の笑みはどこまでも明るい。 傍らを歩く冨岡の両手にも、野菜の山があった。吐く息は二人とも白い。そろそろ雪が降...
にゃんことワンコ

にゃんこなキミとワンコなおまえ 没ネタ

※本編で猫耳付き着る毛布を着た義勇さんの撮影会シーンで没にしたネタです。煉獄さんがポンコツまっしぐら。短いです。 「義勇、録画するからもう一回!」 猫足の形をした電気カイロを手に、腹減ったにゃーなんて言ってみせた義勇へと、スマホをかまえて杏...
煉義

twine (100のお題20:永遠)

広い草原を、一頭の獅子がゆっくりと歩いていました。草原は広く、空は地平よりずっと遠くまで広がり、灼熱の太陽がギラギラと照っています。 草原といっても見渡すかぎり緑はまるで見えません。生き物の姿も、獅子よりほかには一匹たりと見かけませんでした...
竜胆シリーズ

竜胆

※『800字分の愛を込めて』で書いたものを加筆修正しました。 「冨岡の援護、ですか?」 お館様の呼び出しに煉獄が急ぎきてみれば、命じられたのは後方支援だった。それはいっこうにかまわないが、柱が二人であたらねばならぬ任務とは穏やかではない。よ...
煉義

いのちみじかし 前編 (100のお題:93『遊園地』)

無惨と遭遇した場所と聞けば、柱たちが浅草六区への危惧を深めるのは当然の成り行きだ。「あの狡猾な鬼が、いまだにこの界隈をうろついているとは思えんがな」 傍らを歩く煉獄は屈託のない太い声で言い、大きく口を開けて笑うが、目には消えぬ警戒が宿ってい...
にゃんことワンコ

にゃんこなキミと、ワンコなおまえ 1

煉獄杏寿郎、当年とって十八歳は、猫と暮らしたいと常々願っている。 級友などに口を滑らせるたび、おまえは犬派かと思ってたと意外そうな顔をされるが、とくに反論する気はない。犬もいい。忠実で健気だ。元気な犬と公園や河原で遊ぶのはきっと楽しいだろう...
にゃんことワンコ

にゃんこなキミと、ワンコなおまえ 2

突然だが、冨岡義勇、ギリギリ未成年な十九歳は、犬と暮らせたらいいのにと昔から思っている。ここ数ヶ月はなおいっそう、キラキラとした毛並みの大きな犬がいてくれたらと、願うことが増えた。不甲斐ないことだけれども。 「小さい犬さえ怖がるくせに、意外...
にゃんことワンコ

にゃんこなキミと、ワンコなおまえ 3

「美術館というのは、なかなかおもしろいものだな」「そうだな」 レストランの予約は十八時半だ。現在の時刻は二時半を過ぎたばかり。まだまだ時間には余裕がある。 杏寿郎は傍らに立つ義勇を、視線だけで窺い見た。 義勇の眼差しはまっすぐに展示物に注が...
にゃんことワンコ

にゃんこなキミと、ワンコなおまえ 4の1

ホテルのロビーは広くて、天井が高いからか開放的だった。 走ったせいで少々乱れた息を、義勇は深く深呼吸して整える。ハァッと大きく息をついたのは杏寿郎も同様だけれど、息が整うのは義勇より早かった。引退したとはいえ、剣道部主将は伊達じゃない。 部...
にゃんことワンコ

にゃんこなキミと、ワンコなおまえ 4の2

一分とかからずたどり着いた部屋に車を止めた。少し上っ調子な会話は、荷物どうするとかチェックアウト何時? だとか、甘さなどないものばかり。ちょっとでも睦言めいたが最後、部屋に入るのさえ待ちきれずに、借り物の車のなかで貪りあってしまいそうで。 ...