煉獄槇寿郎

にゃんことワンコ

にゃんこなキミと、ワンコなおまえ 1

煉獄杏寿郎、当年とって十八歳は、『猫』と暮らしたいと常々願っている。 級友などに口を滑らせるたび、おまえは犬派かと思ってたと意外そうな顔をされるが、とくに反論する気はない。犬もいい。忠実で健気だ。元気な犬と公園や河原で遊ぶのはきっと楽しいだ...
にゃんことワンコ

にゃんこなキミと、ワンコなおまえ 6の1

それは十二月に入ったばかりのとある朝のことだ。着信音とともにスマホに表示された名に、伊黒は思わずスマホを二度見し、ついで眉をひそめた。 画面に映っている名は『冨岡』という名字のみ。フルネームは冨岡義勇。下の名で呼んだことは一度もない。 即座...
大好きの・・・

真白の雲と君との奇跡2

その朝、杏寿郎は目覚まし時計が鳴るより先に、パチリと目を覚ました。 意識が覚醒したとたんに、ぶわりと体中に歓喜がわき上がって、跳ねるように飛び起きた杏寿郎は急いでカーテンを開けた。 いつでもスッキリと目覚める杏寿郎だが、今日は特別だ。勢いよ...
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真白の雲と君との奇跡3

「ただいま戻りました! 義勇、上がってくれ!」 杏寿郎が玄関の引き戸をガラリと開けて言うと、キョロキョロと興味深げに周囲を見回していた義勇は、ピクンと肩を揺らせた。 先ほどまでは表情は乏しくともやわらかい雰囲気だったのに、門をくぐった辺りか...
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真白の雲と君との奇跡5

土曜も朝から晴れていた。陽射しはまだ午前中だというのにすでに強く、今日も暑くなるのは間違いない。陽射しだけ見れば絶好の海水浴日和といったところだろう。だが、流れる雲が早い。 出がけに見た天気予報では、早くも台風発生を告げていた。とはいえ、杏...
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真白の雲と君との奇跡(加筆修正済みまとめ読みバージョン)

第1話  梅雨が明け、七月も半ば近くともなると、照りつける陽射しも強くなり暑さが増した。すっかり季節は夏だ。六月にはまだ出番が多かった長袖のシャツやベストも、七月に入ってからは目にするだけで暑さが増す感がある。 公私ともに服装はめっきり夏仕...
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満天の星と恋の光 3

真っ赤になって絶句している杏寿郎を、義勇と千寿郎がそろって不思議そうに見ていた。見やる視線はちょっと心配そうでもある。 だが、理由など言えるわけもない。杏寿郎自身、なににこれほど動揺しているのは、説明するのは困難だ。母だけが訳知り顔でクスリ...
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満天の星と恋の光 4

一風変わった光景となった昼食を終え、杏寿郎たちが部屋に戻ったときには、もう二時が近かった。いかに大食漢な杏寿郎でも、さすがに食べ過ぎの感がある。 それでもせっかくの義勇の手作り――義勇はちょっと手伝っただけだと言うけれど、杏寿郎にとっては義...
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満天の星と恋の光 6

さて、お盆休みには義勇の祖父の家に行くと決まったのはいいが、すぐに了承してくれた母はともあれ、父の了承を受けぬうちに決定というわけにもいくまい。興奮の波がいくらか引けば、さすがにあの態度はいかがなものかと杏寿郎も反省した。 浮かれ切っていた...