煉義

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真白の雲と君との奇跡(加筆修正済みまとめ読みバージョン)

第1話 梅雨が明け、七月も半ば近くともなると、照りつける陽射しも強くなり暑さが増した。すっかり季節は夏だ。六月にはまだ出番が多かった長袖のシャツやベストも、七月に入ってからは目にするだけで暑さが増す感がある。 公私ともに服装はめっきり夏仕様...
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午睡

「義勇、眠いのか?」 不意にかけられた声はちょっぴり心配そうだ。義勇は重くてたまらないまぶたをどうにか押し上げた。卓袱台の向かい側で見つめてくる杏寿郎は、思ったとおりちょっと心配顔だ。 杏寿郎の部屋にエアコンはなくて、少し古びた扇風機がブー...
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満天の星と恋の光 1

関東直撃はまぬがれたものの、台風のせいで二日ばかり悪天候がつづいた、その翌日。空は濃い青さを取り戻し、太陽はギラギラと照っている。今日も暑くなりそうだと、窓から差し込む眩しい陽射しに、杏寿郎は掃除機をかける手を止め目を細めた。 八月に入って...
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満天の星と恋の光 2

眩しいというよりも、いっそ刺し貫いてくると言いたくなるよな強い日差しの下であっても、義勇の白く整った顔は、どこか涼やかな清流を思わせる。それが、ちょっと驚いたようなびっくりまなこであってもだ。 もちろん義勇は人形やアンドロイドではないので、...
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満天の星と恋の光 3

真っ赤になって絶句している杏寿郎を、義勇と千寿郎がそろって不思議そうに見ていた。見やる視線はちょっと心配そうでもある。 だが、理由など言えるわけもない。杏寿郎自身、なににこれほど動揺しているのは、説明するのは困難だ。母だけが訳知り顔でクスリ...
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満天の星と恋の光 4

一風変わった光景となった昼食を終え、杏寿郎たちが部屋に戻ったときには、もう二時が近かった。いかに大食漢な杏寿郎でも、さすがに食べ過ぎの感がある。 それでもせっかくの義勇の手作り――義勇はちょっと手伝っただけだと言うけれど、杏寿郎にとっては義...
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満天の星と恋の光 5

うっかり昼寝しすぎて――杏寿郎はまんじりともせず義勇を見つめていただけなのだけれども――完成しなかった標本箱を改めて作る日取りを決めていなかったことに、杏寿郎が気づいたのは、義勇の話題で盛り上がる夕飯の最中だった。 出来上がったのは結局三分...
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満天の星と恋の光 6

さて、お盆休みには義勇の祖父の家に行くと決まったのはいいが、すぐに了承してくれた母はともあれ、父の了承を受けぬうちに決定というわけにもいくまい。興奮の波がいくらか引けば、さすがにあの態度はいかがなものかと杏寿郎も反省した。 浮かれ切っていた...
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満天の星と恋の光 7

「えっ? 同じ川なんですか?」「でも、名前違う」 運転席で笑う錆兎の父の発言に、杏寿郎と義勇はそろって驚きの声をあげた。 全国的にお盆を迎えた八月十三日。今日から二泊三日義勇と一緒だ。目的地である隣県の山麓へは、錆兎の父が運転する車で向かう...
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満天の星と恋の光 8

出前のうな重に恐縮しつつも、そこは育ち盛り。どうせそれだけじゃ足りんだろうと用意されていた、肉じゃがやら豆腐ステーキやらのおかずまですっかり平らげて。シイタケととろろ昆布のみそ汁もきれいに空にした中学生組に、錆兎の父はちょっぴりポカンとし、...