煉義 百年の約束は、いらない 部活を引退したら、放課後がずいぶんと暇になった。受験生なんだから勉強しろって話だろうが、やる気の出ない日だってある。たとえば、今日のような。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ すっかり人のいなくなった教室で、義勇はぼんやりと窓の外を見つめていた。... 2022.01.06 煉義義勇受
大好きの・・・ 霞の空と海の青 「母上、やはり大きすぎるのではないでしょうか」 鏡に映した自分の姿は、どうにも服に着られている感が否めない。杏寿郎は、慣れぬネクタイを気にしながら言った。 四月初めの穏やかな午後の陽射しに照らされて、姿見に映る濃紺のブレザーにグレーのスラッ... 2021.03.06 大好きの・・・煉義義勇受OTHER
大好きの・・・ 清かの風と小さな笑顔 空がだんだんと透明感を増して、吹く風も爽やかになってきた。季節は初夏。洗面所の窓から見える五月の空は晴れわたっている。清々しい朝だ。 中学生になった杏寿郎は、毎日、幸せいっぱいに学校に通っている。 そろそろ着慣れつつある制服は、まだまだサイ... 2021.03.07 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 五月雨と君の冷たい手(前) 六月中旬ともなれば、すっかりクラスメイトの顔と名前も一致して、新しい学校での生活にもだいぶ馴染んできた。校内で迷うことも、もうめったにない。 初等部から高等部までが併設された一貫校であるから、中等部の生徒は、ほとんどが持ち上がり組だ。杏寿郎... 2021.03.07 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 五月雨と君の冷たい手(後) 「さて、これから部活に出なきゃいけないんで、あまり時間がない。手短に済まそうか」 しとしとと降る雨のなか、錆兎は笑ってそう言った。 委員会が終わったと同時に錆兎にうながされ、連れだってやってきたのは、校舎の裏手にある大きな桜の木の下だ。放課... 2021.03.08 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 真白の雲と君との奇跡1 梅雨が明け、七月も半ば近くともなると、照りつける陽射しが暑さを増す。煉獄家ではあまりエアコンを使用しないので、全教室にエアコン完備の学校のほうが、よっぽど過ごしやすい。 とはいえ、一歩外に出てしまえば暑いことに変わりはなく、昼休みに校庭では... 2021.03.10 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 真白の雲と君との奇跡2 その朝、杏寿郎は目覚まし時計が鳴るより先に、パチリと目を覚ました。 意識が覚醒したとたんに、ぶわりと体中に歓喜がわき上がって、跳ねるように飛び起きた杏寿郎は急いでカーテンを開けた。 いつでもスッキリと目覚める杏寿郎だが、今日は特別だ。勢いよ... 2021.03.12 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 真白の雲と君との奇跡3 「ただいま戻りました! 義勇、上がってくれ!」 杏寿郎が玄関の引き戸をガラリと開けて言うと、キョロキョロと興味深げに周囲を見回していた義勇は、ピクンと肩を揺らせた。 先ほどまでは表情は乏しくともやわらかい雰囲気だったのに、門をくぐった辺りか... 2021.03.13 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 真白の雲と君との奇跡4 義勇がやって来た翌日、杏寿郎は初めて義勇に電話した。 とはいえ、中学生にはまだ早いとの煉獄家の教育方針で、杏寿郎はスマホを持っていない。義勇がスマホを持っているのかも知らなかった。保護者に渡された連絡網に書かれた義勇の連絡先は、鱗滝家のもの... 2021.03.14 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 真白の雲と君との奇跡5 土曜も朝から晴れていた。陽射しはまだ午前中だというのにすでに強く、今日も暑くなるのは間違いない。陽射しだけ見れば絶好の海水浴日和といったところだろう。だが、流れる雲が早い。 出がけに見た天気予報では、早くも台風発生を告げていた。とはいえ、杏... 2021.03.16 大好きの・・・煉義義勇受