大好きの・・・

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満天の星と恋の光 3

真っ赤になって絶句している杏寿郎を、義勇と千寿郎がそろって不思議そうに見ていた。見やる視線はちょっと心配そうでもある。 だが、理由など言えるわけもない。杏寿郎自身、なににこれほど動揺しているのは、説明するのは困難だ。母だけが訳知り顔でクスリ...
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満天の星と恋の光 4

一風変わった光景となった昼食を終え、杏寿郎たちが部屋に戻ったときには、もう二時が近かった。いかに大食漢な杏寿郎でも、さすがに食べ過ぎの感がある。 それでもせっかくの義勇の手作り――義勇はちょっと手伝っただけだと言うけれど、杏寿郎にとっては義...
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満天の星と恋の光 5

うっかり昼寝しすぎて――杏寿郎はまんじりともせず義勇を見つめていただけなのだけれども――完成しなかった標本箱を改めて作る日取りを決めていなかったことに、杏寿郎が気づいたのは、義勇の話題で盛り上がる夕飯の最中だった。 出来上がったのは結局三分...
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満天の星と恋の光 6

さて、お盆休みには義勇の祖父の家に行くと決まったのはいいが、すぐに了承してくれた母はともあれ、父の了承を受けぬうちに決定というわけにもいくまい。興奮の波がいくらか引けば、さすがにあの態度はいかがなものかと杏寿郎も反省した。 浮かれ切っていた...
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満天の星と恋の光 7

「えっ? 同じ川なんですか?」「でも、名前違う」 運転席で笑う錆兎の父の発言に、杏寿郎と義勇はそろって驚きの声をあげた。  全国的にお盆を迎えた八月十三日。今日から二泊三日義勇と一緒だ。目的地である隣県の山麓へは、錆兎の父が運転する車で向か...
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満天の星と恋の光 8

出前のうな重に恐縮しつつも、そこは育ち盛り。どうせそれだけじゃ足りんだろうと用意されていた、肉じゃがやら豆腐ステーキやらのおかずまですっかり平らげて。シイタケととろろ昆布のみそ汁もきれいに空にした中学生組に、錆兎の父はちょっぴりポカンとし、...
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満天の星と恋の光 9

大人たちも交えての雑談は和やかに過ぎて、チャームも完成してしまえば特にやることもない。夏の日はまだ高く、時間はたっぷりとある。 道路の渋滞を見込んで予定を立てていたから、初日の今日は予想外に余裕があった。とはいえ、もともと細かな予定は組んだ...
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満天の星と恋の光 10

バーベキューの後片付けをしている最中に話題になったのは、明日の沢登りである。 石を拾うことは母にも告げてあったから、大人たちにも伝わっていたようだが、沢を遡行するとは思ってもいなかったらしい。杏寿郎が「俺らでも沢登りできますか?」と尋ねたと...
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満天の星と恋の光 11

閉じたまぶたを透かして、朝の眩しい陽射しが眼球を刺す。ギュッと眉を寄せた杏寿郎は、すぐにパチリと目を開いた。 錆兎が夕べセットしていたスマホのアラームはまだ鳴っていない。代わりにどこかの家の雄鶏が、けたたましい鳴き声をひびかせていた。 窓を...
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満天の星と恋の光 12

岩盤の高さは、ざっと見積もって三メートルほどだろうか。階段状になった岩を流れてくるので、滝と言われて思い浮かぶイメージとは重ならなかった。流れ落ちる水量も、観光地で見るような瀑布とはけた違いに少ない。 それでも勢いよく流れ落ちる水は空気を孕...