桃一

煉義

乱舞する深紅のラブシック 3

口に、なにか触れてる。とろりとした羊水のような眠りのなか、意識をゆらゆらとただよわせながら、義一はぼんやりと思った。 覚醒しきらないままに感じるなにかは、やわらかい。やわらかくて温かい、なにか。それと……気持ち、いい? これはなんだろう。 ...
煉義

乱舞する深紅のラブシック 2

覚えているのは真っ赤な首輪。小さな金色の鈴がついた。「どうしたの、義一」「あのね、すごくかわいい猫の写真あるの。ホラ!」 幼稚園からの帰り道。笑った義一が指差したほうを見て、お姉ちゃんもニコッと笑い、そしてすぐに眉を曇らせた。「この子、迷子...
煉義

乱舞する深紅のラブシック 1

とうとう買ってしまった……。というか、届いてしまった。 宅配の配達員が浮かべる笑みを見返せず、うつむいたまま無言で受け取りにサインする義一の手は、隠しきれぬほど震えていた。ほぼ仕送りに頼っている義一にとっては、分不相応すぎる高額商品だ。なに...