大好きの・・・ 真白の雲と君との奇跡5 土曜も朝から晴れていた。陽射しはまだ午前中だというのにすでに強く、今日も暑くなるのは間違いない。陽射しだけ見れば絶好の海水浴日和といったところだろう。だが、流れる雲が早い。 出がけに見た天気予報では、早くも台風発生を告げていた。とはいえ、杏... 2021.03.16 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 真白の雲と君との奇跡6 駅を出て徒歩十分ほどにある目的地、こゆるぎの浜は、海水浴客でにぎわうエリアより北側に広がっている。漁港が近く、浜辺には砂礫が多く岩礁もあるせいか、海水浴客はあまりみかけない。磯遊びや、釣りを楽しむ人向けな浜辺だ。 海水浴のエリアは盛況なよう... 2021.03.16 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 真白の雲と君との奇跡7 困惑は杏寿郎の胸にどっかりと居座り、どうあがいても消えてくれそうにない。 どうにかなんでもないと笑ってみせたものの、あまり効果はないようだ。元々杏寿郎はごまかしたり嘘をついたりするのは得手ではない。しかも真っ赤に染まった顔も一向に熱が去って... 2021.03.18 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 真白の雲と君との奇跡8 オー、アーオアオと低く鳴くアオバトの声が、高鳴る波音に紛れて聞こえる。絶え間なく届いてくる海水浴客の喧騒や、ときおり入る水難事故への忠告を呼び掛ける放送は、今この空間、この時が、日常と切り離されたものではないのを知らせるのに、なんだかひどく... 2021.03.19 大好きの・・・煉義義勇受
SS~短編 過ぎる時、変わらぬ想い 近所に竈門ベーカリーというパン屋ができたのは、義勇が中学に入学した春だった。 初めての着慣れぬ学ランに、気恥ずかしさと誇らしさを持て余しながら、姉と一緒に入学式から帰る道すがらで、花輪の飾ってあるその店に気づいた。「いい匂い。ね、買っていこ... 2021.03.28 SS~短編義炭
大好きの・・・ 真白の雲と君との奇跡10 ひとしきり千寿郎を抱きしめて泣いたあと、義勇はようやく顔をあげ、杏寿郎に向かって少しバツ悪げに笑ってくれた。 どうしようとうろたえていた千寿郎には悪いが、義勇が微笑んでくれて杏寿郎は胸を撫でおろす。ほんのちょっぴりのヤキモチは、決して口には... 2021.03.21 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 真白の雲と君との奇跡(加筆修正済みまとめ読みバージョン) 第1話 梅雨が明け、七月も半ば近くともなると、照りつける陽射しも強くなり暑さが増した。すっかり季節は夏だ。六月にはまだ出番が多かった長袖のシャツやベストも、七月に入ってからは目にするだけで暑さが増す感がある。 公私ともに服装はめっきり夏仕... 2021.03.21 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 午睡 「義勇、眠いのか?」 不意にかけられた声はちょっぴり心配そうだ。義勇は重くてたまらないまぶたをどうにか押し上げた。卓袱台の向かい側で見つめてくる杏寿郎は、思ったとおりちょっと心配顔だ。 杏寿郎の部屋にエアコンはなくて、少し古びた扇風機がブー... 2021.03.28 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 満天の星と恋の光 1 関東直撃はまぬがれたものの、台風のせいで二日ばかり悪天候がつづいた、その翌日。空は濃い青さを取り戻し、太陽はギラギラと照っている。今日も暑くなりそうだと、窓から差し込む眩しい陽射しに、杏寿郎は掃除機をかける手を止め目を細めた。 八月に入って... 2021.04.05 大好きの・・・煉義義勇受