にゃんことワンコ にゃんこなキミと、ワンコなおまえ 6の2 「おや、いらっしゃい。鏑丸さまは健やかにしておいでかな?」 伊黒が店内に足を踏み入れたと同時に、艶やかなボブの髪を揺らせて、店長が振り返った。出逢ってから十二年も経つというのに、この人はいつ見ても変わらないなと、伊黒はわずかに苦笑する。 ニ... 2022.05.02 煉義義勇受にゃんことワンコ
にゃんことワンコ にゃんこなキミと、ワンコなおまえ はみ出しネタ(呼び方の話) 体力的な問題などを鑑みれば、伊黒が幼稚園や保育園に通うには、問題が山積みだった。結局、杏寿郎と義勇以外には同年代の子らと遊ぶ機会もないままに小学校に入学したのは、しかたのないことかもしれない。 他人に囲まれるよりも、まずは家族の愛情を。そう... 2022.02.06 煉義義勇受にゃんことワンコ
竜胆シリーズ 流れ星 前編 任務を終えた煉獄が、ふと足を止めた理由は、見慣れた色が視界に入ったからだ。 彼かの人の瞳よりはいくぶん紫がかった青い花。アヤメだ。緑深い草原に凛と咲くアヤメを見つめる煉獄の目が、柔らかくたわみ、口元に薄い微笑みが浮かんだ。 今ごろ彼はどこで... 2021.10.24 煉義竜胆シリーズ義勇受
大好きの・・・ 大好きのチョコ 節分が終った二月の商店街は、赤やピンクで溢れている。ランドセルを背負ったまま杏寿郎は、華やいだアーケードをウキウキと歩いていた。 商店街に杏寿郎がやってきたのは、今日で二度目だ。 前は七夕飾りが揺れていて、杏寿郎は、短冊書かせてもらった。そ... 2021.02.13 大好きの・・・煉義義勇受
竜胆シリーズ 流れ星 後編 『冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します』 その言葉が耳に入った瞬間に、煉獄の脳裏に浮かんだ言葉は、彼はどんな顔をして聞いているのだろう、だった。 おそらくは、常とまったく変わらぬ無表情に違いない。彼はいつだってそうだ。 ほんの少し目線を動かせ... 2021.11.29 煉義竜胆シリーズ義勇受
大好きの・・・ 大好きのチョコ(ロングバージョン) ※『800字分の愛を込めて』で書いたものに加筆修正したロングバージョンです 節分が終った二月の商店街は、赤やピンクで溢れていた。目に入るのは、そこここに飾られたピカピカしたハート型のバルーンやポップ、愛らしいラッピングのプレゼントを模したオ... 2021.08.15 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 霞の空と海の青 「母上、やはり大きすぎるのではないでしょうか」 鏡に映した自分の姿は、どうにも服に着られている感が否めない。杏寿郎は、慣れぬネクタイを気にしながら言った。 四月初めの穏やかな午後の陽射しに照らされて、姿見に映る濃紺のブレザーにグレーのスラッ... 2021.03.06 大好きの・・・煉義義勇受OTHER
大好きの・・・ 清かの風と小さな笑顔 空がだんだんと透明感を増して、吹く風も爽やかになってきた。季節は初夏。洗面所の窓から見える五月の空は晴れわたっている。清々しい朝だ。 中学生になった杏寿郎は、毎日、幸せいっぱいに学校に通っている。 そろそろ着慣れつつある制服は、まだまだサイ... 2021.03.07 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 五月雨と君の冷たい手(前) 六月中旬ともなれば、すっかりクラスメイトの顔と名前も一致して、新しい学校での生活にもだいぶ馴染んできた。校内で迷うことも、もうめったにない。 初等部から高等部までが併設された一貫校であるから、中等部の生徒は、ほとんどが持ち上がり組だ。杏寿郎... 2021.03.07 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 五月雨と君の冷たい手(後) 「さて、これから部活に出なきゃいけないんで、あまり時間がない。手短に済まそうか」 しとしとと降る雨のなか、錆兎は笑ってそう言った。 委員会が終わったと同時に錆兎にうながされ、連れだってやってきたのは、校舎の裏手にある大きな桜の木の下だ。放課... 2021.03.08 大好きの・・・煉義義勇受