水天の如し 水天の如し 五 ◇少年、宿縁の強きを願うの段◇ 炭治郎が師事している鱗滝老師ラオシーの仙洞せんとうは、狭霧山の頂上付近にある。地上からはるかに遠い仙洞付近の空気は薄く、ときおり雲がかかり、伸ばした手の先が見えないほど白く霞みがかることもあるぐらいだ。 初めて来たときに、ひょうたんに入れら... 2021.10.10 シリーズ・連載もの義炭水天の如し
水天の如し 水天の如し 六 ◇少年、天秤秤に己が命を乗せる一歩を踏み出すの段◇ 「とらえたっ!」 気合一閃、炭治郎が振りかぶった木剣は、だが、カァンと高い音を立ててあっけなく弾き飛ばされた。「甘い! 剣は決して手放すな! 呼吸が乱れているぞ!」 たちまち飛んでくる叱責は、腹への鋭い一撃とともにだった。避ける間などまるで... 2021.10.27 シリーズ・連載もの義炭水天の如し
水天の如し 水天の如し 八 ◇少年、大いに悩みほのかに恥じるの段◇ 洞窟はふたたび闇が続いていた。とはいえ、先のような右も左もわからない真の闇ではない。 うっすら明るさをもたらしている光は、苔だろうか。金緑色のほのかな光は、いかにも淡く頼りない。だが、それでも視界を取り戻すには充分だ。 それでも暗いことに変... 2022.01.04 シリーズ・連載もの義炭水天の如し
水天の如し 水天の如し 九 ◇少年、大いなる決意と旅立ちの時の段◇ 元宵節げんしょうせつまであと二日。明日にはさっそく出立するという晩だ。 炭治郎は、これでもかというほどの料理を卓に乗せるつもりだったが、残念ながら自力では果たせそうになかった。理由は至極単純である。料理をしている途中で、とうとう立っていられ... 2022.01.16 シリーズ・連載もの義炭水天の如し
シリーズ・連載もの 水天の如し 第一章 ◇少年、運命と対峙すの段◇ 忙しなく息を吐きながら、炭治郎は必死に走る。だが、積もった雪に足を取られ思ったようには走れず、速度は平地を歩むのと大差はない。 空を覆う雲は厚く、また雪が降ってきそうだ。ぐっしょりと濡れた衣服が、炭治郎の体温を... 2022.02.19 シリーズ・連載もの義炭水天の如し
大好きの・・・ 満天の星と恋の光 7 「えっ? 同じ川なんですか?」「でも、名前違う」 運転席で笑う錆兎の父の発言に、杏寿郎と義勇はそろって驚きの声をあげた。 全国的にお盆を迎えた八月十三日。今日から二泊三日義勇と一緒だ。目的地である隣県の山麓へは、錆兎の父が運転する車で向か... 2021.04.18 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 満天の星と恋の光 8 出前のうな重に恐縮しつつも、そこは育ち盛り。どうせそれだけじゃ足りんだろうと用意されていた、肉じゃがやら豆腐ステーキやらのおかずまですっかり平らげて。シイタケととろろ昆布のみそ汁もきれいに空にした中学生組に、錆兎の父はちょっぴりポカンとし、... 2021.04.18 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 満天の星と恋の光 10 バーベキューの後片付けをしている最中に話題になったのは、明日の沢登りである。 石を拾うことは母にも告げてあったから、大人たちにも伝わっていたようだが、沢を遡行するとは思ってもいなかったらしい。杏寿郎が「俺らでも沢登りできますか?」と尋ねたと... 2021.04.25 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 満天の星と恋の光 11 閉じたまぶたを透かして、朝の眩しい陽射しが眼球を刺す。ギュッと眉を寄せた杏寿郎は、すぐにパチリと目を開いた。 錆兎が夕べセットしていたスマホのアラームはまだ鳴っていない。代わりにどこかの家の雄鶏が、けたたましい鳴き声をひびかせていた。 窓を... 2021.04.29 大好きの・・・煉義義勇受