錆兎

シリーズ・連載もの

水天の如し 第一章

◇少年、運命と対峙すの段◇  忙しなく息を吐きながら、炭治郎は必死に走る。だが、積もった雪に足を取られ思ったようには走れず、速度は平地を歩むのと大差はない。 空を覆う雲は厚く、また雪が降ってきそうだ。ぐっしょりと濡れた衣服が、炭治郎の体温を...
年年歳歳

迷子のヒーロー

年年歳歳シリーズ第1話。8歳差な義炭(中二×小一)の出逢い編。
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五月雨と君の冷たい手(前)

六月中旬ともなれば、すっかりクラスメイトの顔と名前も一致して、新しい学校での生活にもだいぶ馴染んできた。校内で迷うことも、もうめったにない。 初等部から高等部までが併設された一貫校であるから、中等部の生徒は、ほとんどが持ち上がり組だ。杏寿郎...
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五月雨と君の冷たい手(後)

「さて、これから部活に出なきゃいけないんで、あまり時間がない。手短に済まそうか」  しとしとと降る雨のなか、錆兎は笑ってそう言った。 委員会が終わったと同時に錆兎にうながされ、連れだってやってきたのは、校舎の裏手にある大きな桜の木の下だ。放...
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真白の雲と君との奇跡1

梅雨が明け、七月も半ば近くともなると、照りつける陽射しが暑さを増す。煉獄家ではあまりエアコンを使用しないので、全教室にエアコン完備の学校のほうが、よっぽど過ごしやすい。 とはいえ、一歩外に出てしまえば暑いことに変わりはなく、昼休みに校庭では...
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真白の雲と君との奇跡(加筆修正済みまとめ読みバージョン)

第1話  梅雨が明け、七月も半ば近くともなると、照りつける陽射しも強くなり暑さが増した。すっかり季節は夏だ。六月にはまだ出番が多かった長袖のシャツやベストも、七月に入ってからは目にするだけで暑さが増す感がある。 公私ともに服装はめっきり夏仕...
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満天の星と恋の光 5

うっかり昼寝しすぎて――杏寿郎はまんじりともせず義勇を見つめていただけなのだけれども――完成しなかった標本箱を改めて作る日取りを決めていなかったことに、杏寿郎が気づいたのは、義勇の話題で盛り上がる夕飯の最中だった。 出来上がったのは結局三分...
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満天の星と恋の光 7

「えっ? 同じ川なんですか?」「でも、名前違う」 運転席で笑う錆兎の父の発言に、杏寿郎と義勇はそろって驚きの声をあげた。  全国的にお盆を迎えた八月十三日。今日から二泊三日義勇と一緒だ。目的地である隣県の山麓へは、錆兎の父が運転する車で向か...
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満天の星と恋の光 8

出前のうな重に恐縮しつつも、そこは育ち盛り。どうせそれだけじゃ足りんだろうと用意されていた、肉じゃがやら豆腐ステーキやらのおかずまですっかり平らげて。シイタケととろろ昆布のみそ汁もきれいに空にした中学生組に、錆兎の父はちょっぴりポカンとし、...
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満天の星と恋の光 9

大人たちも交えての雑談は和やかに過ぎて、チャームも完成してしまえば特にやることもない。夏の日はまだ高く、時間はたっぷりとある。 道路の渋滞を見込んで予定を立てていたから、初日の今日は予想外に余裕があった。とはいえ、もともと細かな予定は組んだ...