にゃんことワンコ にゃんこなキミと、ワンコなおまえ 6の1 それは十二月に入ったばかりのとある朝のことだ。着信音とともにスマホに表示された名に、伊黒は思わずスマホを二度見し、ついで眉をひそめた。 画面に映っている名は『冨岡』という名字のみ。フルネームは冨岡義勇。下の名で呼んだことは一度もない。 即座... 2022.02.04 煉義義勇受にゃんことワンコ
大好きの・・・ 満天の星と恋の光 7 「えっ? 同じ川なんですか?」「でも、名前違う」 運転席で笑う錆兎の父の発言に、杏寿郎と義勇はそろって驚きの声をあげた。 全国的にお盆を迎えた八月十三日。今日から二泊三日義勇と一緒だ。目的地である隣県の山麓へは、錆兎の父が運転する車で向か... 2021.04.18 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 満天の星と恋の光 8 出前のうな重に恐縮しつつも、そこは育ち盛り。どうせそれだけじゃ足りんだろうと用意されていた、肉じゃがやら豆腐ステーキやらのおかずまですっかり平らげて。シイタケととろろ昆布のみそ汁もきれいに空にした中学生組に、錆兎の父はちょっぴりポカンとし、... 2021.04.18 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 満天の星と恋の光 9 大人たちも交えての雑談は和やかに過ぎて、チャームも完成してしまえば特にやることもない。夏の日はまだ高く、時間はたっぷりとある。 道路の渋滞を見込んで予定を立てていたから、初日の今日は予想外に余裕があった。とはいえ、もともと細かな予定は組んだ... 2021.04.24 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 満天の星と恋の光 10 バーベキューの後片付けをしている最中に話題になったのは、明日の沢登りである。 石を拾うことは母にも告げてあったから、大人たちにも伝わっていたようだが、沢を遡行するとは思ってもいなかったらしい。杏寿郎が「俺らでも沢登りできますか?」と尋ねたと... 2021.04.25 大好きの・・・煉義義勇受
大好きの・・・ 満天の星と恋の光 11 閉じたまぶたを透かして、朝の眩しい陽射しが眼球を刺す。ギュッと眉を寄せた杏寿郎は、すぐにパチリと目を開いた。 錆兎が夕べセットしていたスマホのアラームはまだ鳴っていない。代わりにどこかの家の雄鶏が、けたたましい鳴き声をひびかせていた。 窓を... 2021.04.29 大好きの・・・煉義義勇受
シリーズ・連載もの ファイト 世の中には、主役になれる人と、モブにしかなれない人がいる。私は完全に後者だ。二八年も生きてりゃ、悟らざるを得ない。 顔は人並みだし、頭がいいわけでもない。高校大学と頑張ったバレーだって、才能なんてなかった。完全なモブだ。だから今日みたいなこ... 2021.03.01 シリーズ・連載もの義炭家族の肖像
家族の肖像 真昼の月のように 「月彦、体調はどうかな?」 ノックにつづいて開かれたドアから、寮監が顔を出した。ゆっくりと起き上がろうとした月彦をそのままでととめた教師は、人の好さげな笑みを崩さない。「昨日逢えなかった候補者さんたちが、お見舞いに来てくださったよ。具合が悪... 2021.03.01 シリーズ・連載もの義炭家族の肖像