140字SS

月の綺麗な夜に あなたが好きですと笑う 片想い義←炭

遅くなったからと駅まで送ってくれる先生に、月が綺麗ですねと言ったらまじまじと見つめられた。ほら、満月ですよ綺麗ですよねと笑ってみせる。そうだなと視線を外してまた歩き出した先生の背中に向かって、声に出さずに言って泣きたい気分で笑った。貴方が好きですと。

突然の雨の日に 愛してたと呟く 恋人同士のぎゆたん

突然降り出した雨を避けた軒先で「愛してた」とお前はぽつり呟いた。雨の雫に濡れた顔で見上げ「前世の俺も、前世の貴方を愛してたんです。知ってました?」と悪戯に微笑む。
「今は?」少し不安になる俺に、「今の俺も、今の貴方を愛してますよ」と濡れた顔のままお前は笑った。

どこか懐かしい雪原で 守れない約束を交わす キメ学義←炭

朝練前、校門で行き合った先生に駆け寄った。雪の積もった校庭にはまだ誰の足跡もない。その白さに何故だか泣きたくなった。
涙の代わりにポロリと零れた「好きです」の一言に、いよいよ泣きそうになりながら「ちゃんと忘れます」と笑ってみせた。
心配そうな顔をしないで。困らせたりしないから。

星降る夜に 幸せでしたと笑う 同棲ぎゆたん

冬の夜空は星が綺麗だ。ここ暫く構ってやれなかった詫びのサプライズは悉く失敗して、ヤキが回ったかと自己嫌悪する。
それなのにお前は幸せでしたと笑う。今日一日、義勇さんを独り占めできたと嬉しそうに。
お前の幸せの容量はそんなものかと苦笑する。お前が笑えばすぐに幸せになれる俺も大概だけど。

プラットホームで 繋いでいた手を離す 同棲ぎゆたん

人気のないプラットホームでそっと手を繋いだ。
電車が来るまでだけとクスクスと笑って、繋いだ手をブンブン振ってみたりする。一緒に暮らしているんです、大好きなんです愛なんですと、世界に告げる代わりに手を繋ぐ。
電車が来る。繋いだ手を離しても視線で繋がるから、この恋は無敵と信じさせて。

泣きたくなるような昼下がりに 愛していましたと言う キメ学義→炭

晴れの日に相応しい穏やかな陽射しが、校庭に満ちている。聞こえる笑い声やすすり泣き。何度繰り返しても今日ばかりは少し感傷的になるが、今年は格別だ。
愛してたと、胸の奥で独り言ちる。制服のお前を愛してた。
「先生っ!」
笑顔で駆け寄る子供に、いつか伝えたい言葉がある。愛してる、と。

美しい朝焼けの中で 背中を見つめることしか出来なかった 恋人未満の義炭

燃えるような赫で世界が染まる。地に散る赤を覆い隠すように。
刀を鞘に納め「行くぞ」と声をかけた男に、子供は「はい」と答えた。
先を行く背を、ふと足を止め見つめる。貴方が言ってくれたなら、はいと答える準備は出来ているのに。
思えども言葉にならず。臆病者たちを朝焼けだけが照らしていた。

縁日の人混みに紛れて 繋いでいた手を離す 片想い義→炭

逸れるからと言い訳して繋いだ手を引かれ、子供に言われるまま縁日の人混みの中を歩く。時折見上げてくる幼い笑顔が愛おしい。
いつまでこうして手を繋いでくれるのか。感傷に浸る間もなく、友達を見つけた子供が見上げてくる。
行っておいでと手を離す俺の胸の痛みを、お前は知らなくていい。

コンビニからの帰り道 泣くなと頬に触れる キメ学義炭

ゴムが切れたと苦笑した貴方とコンビニへ。真夜中の通りは静かで声も自然と小さくなる。
普通の恋人同士みたいに手を繋いで歩く。幸せな筈なのに、涙が出るのは何故だろう。
誰も見ていない深夜の路上。先生、と小さく呟いたら、泣くなと優しい掌が頬を包んだ。お日様の下でも恋人でいられたらいいのに。

二人きりの室内で 黙ったまま頭を撫でる 同棲ぎゆたん

ちょっとした喧嘩の後で、黙り込んで睨み合う。
壁掛け時計のカチコチという音がやけに響いて、意地を張る自分にうんざりしかけた頃。伸びてきた手がぐしゃぐしゃと頭を撫でた。
誤魔化す気ですかと唇を尖らせれば大人な顔で苦笑して、風呂入ろうかと誘ってくる。
ちぇっ、また負けたと思いながら頷いた。

線香花火をした夜に 指を絡めて手を繋ぐ 両想い義炭

ジジと微かな音を立てて、赫い球になった火がポトリと落ちた。
夏の終わり。線香花火もお仕舞い。我身を見るようで心許なさを覚えたら手が温もりに包まれた。
絡めた指がトントンと、宥めるように手を叩く。握り返して照れ笑いすれば、微笑みが返ってきた。
大丈夫。花火じゃないから、この恋は散らない。

静かな雪の朝に 最後の告白をする 片想い義←炭

犬を避ける姿を可愛いと思ってました。初めて逢った貴方は怖くて仕方ありませんでした。
時折そんな隠し事を口にしても、貴方はいつもそうかと言うだけ。
照り返しの眩しい雪の朝、今日にしようと決めた。雪の日に始まったから終わるのも雪の日に。
これが最後の隠し事。内緒でしたけど、貴方が好きです。

プラネタリウムで 黙ったまま頭を撫でる キメ学義→炭

人工の星空の下、微睡みだす子供に苦笑する。昔通った施設が閉館すると告げたら、行きたいと目を輝かせた子供は、いざ来たら作り物の夜に眠気を誘われたらしい。
起こさなければ後できっと怒るのだろうが、今は眠っていて欲しい。
せめてお前を撫でるこの手を離すまで。

コンビニからの帰り道 馬鹿だなと笑った 明日別れる義炭

3年間だけ恋人になって下さい。そんな告白をしたのは入学式。
明日は卒業。恋人らしいことなんて何もなかった。それでも恋人と呼ばせてくれた人。
時間を合わせて偶然を装い、コンビニで逢って少し話すだけのいつもの逢瀬。一緒に帰ろう。初めて言われた。
泣きそうになったら、馬鹿だなと貴方は笑った。

月の綺麗な夜に 泣くなと頬に触れる 明日別れる義炭

こんなに月は綺麗なのに、愛してるの代わりに口にする事も出来ない。
傷つけて傷つけられた。愛しているのに愛しているから傷つけあった。
日付が変わったら別れようか。
呟きに頷いた。時計の針が0時を指す。
さよならと呟いた貴方の手が、泣くなと濡れた頬を包んだ。ここからもう一度始めようと笑って。

冨岡さんの家の前で 手首を掴んで引き寄せた 両想い義炭

もういいですと言い捨てて、振り返らず屋敷を出た所で足が止まる。
頑固な俺に呆れてあの人の恋が冷めたらどうしよう。怖くなり振り返ろうとしたら掴まれた手首。倒れ込んだ先は貴方の胸で、安心したら謝罪が口をついた。
試すようなことしてごめんなさい。でも言葉にしてくれない貴方も悪いんですよ?

美しい朝焼けの中で くすくすと笑い合う キメ学義→←炭

合宿最終日の朝。寝静まった部屋からそっと抜け出した。
見事な朝焼けを見つめる人影。喫煙所じゃないですよと声をかければ、しーっと指を立てて薄く笑う。
まだ先生の顔になっていない貴方に、生徒の顔を忘れて笑い返す。俺の瞳の色した空が貴方の瞳の色に変わるまで、肩書のない二人で笑っていようか。

二人きりの室内で 愛してたと呟く 同棲ぎゆたん

家具を運び出した室内はどこか寂しい。想い出が多すぎて掃除をする手も止まりがちになる。
ぼんやりとしてたら後ろから抱き締められた。どうしたと問いかけているのが分かるから「愛してたと思って」と小さく笑った。
この部屋で過ごす全てを愛してた。きっと明日からの全ても愛してる。

突然の雨の日に 会いたかったと微笑む 身体だけの関係の義炭

突然の雨を避けたコンビニで、逢ったのは偶然。
丁度いいとゴム製品を手にした貴方の背中に、こっそりアカンベェなんかしてみる。振り返るのは反則でしょう。驚く顔が幼いのも。
苦笑するかと思えば逢いたかったなんて、愛しげに微笑まないで。
好きって言わないくせに、ズルい人だと俺の方こそ苦笑した。

真夜中の海辺で 会いたかったと微笑む 仲直りの下手な義炭

初めて喧嘩した。意地を張り連絡も取らないまま一週間。喧嘩した事がなかったから、仲直りの仕方が分からない。
泳ぎに行こうかと約束した日。既読のつかないLINEに泣いて過ごした後で、未練がましく一人で海へ。真夜中の砂浜に貴方は立ってた。
逢いたかったと微笑む貴方に、ダイブするまであと5秒。

(多分義勇さんは喧嘩した日に慌てすぎてスマホ踏みつぶしてると思いますw)

真夏の太陽の下で さよならを言う 同棲ぎゆたん

デートは待ち合わせてから。笑う子供に同意した所為で、真夏の日の下で口寂しさに消費した煙草は3本目。嫌がられるから部屋では滅多に吸えない。
やって来た途端に煙草を取り上げて、はいさよならと携帯灰皿にねじ込む子供に肩を竦めた。
キス出来なくなると拗ねる顔が見たかったと言ったら怒るだろうか。

プラットホームで 気付かないふりをする 身体だけの関係の義炭

混みあうプラットホームで貴方を見つけた。隣には綺麗な人。貴方はいつもの無表情。匂いが届かないから嬉しいのかすら分からない。
目が合った気がして慌てて気付かぬふりをした。恋に気づく前に結んだ関係。自覚したら終わるなんて馬鹿だ。俯いてたら肩を掴んだ貴方の手。
ねぇ俺を選ぶなら心も下さい。

プラットホームで 嫌いですと嘘をつく 義炭(26歳×20歳)

駅のホームは今日も混雑。彼の部屋に泊った翌朝はいつもこれだ。
鼻が利くから人混みは苦手。傍らの彼の匂いがなければ耐えられないぐらいには。
「貴方の家に泊まるの嫌いです」
唇を尖らせ言ってみる。半分本当で半分嘘。大人の顔で苦笑して一緒に暮らせる部屋に引っ越すかと、囁く貴方に頷き笑った。

イチョウ並木の黄色に染まって 背中を見つめることしか出来なかった 義炭(25歳×19歳)

見慣れた背中をイチョウ並木で見つけた。
声をかけたらきっと振り向いてくれるだろう。声をかけるのが躊躇われたのは、スーツ姿の貴方の背に大人の男性なんだと改めて思ったから。
子供っぽい自分は不釣り合いに感じて見つめることしか出来ずにいたら、不意に振り向いた貴方。浮かんだ笑みは子供じみてた。

静かな雪の朝に 繋いでいた手を離す 両想い義炭

見られたら困るでしょうと、お前は言う。お前が困るのなら素直に離してやってもいいが、俺が困ると思っているのだから腹が立つ。
積もった雪を言い訳に繋いだ手。分かったと言って離せば、傷ついた顔をするから、有無を言わさず抱き上げた。
恥ずかしいと喚いてろ。困ると言われるより気分が良いから。

線香花火をした夜に もう会えないと告げる 兄弟弟子以上恋人未満の義炭

残り物ですけどと、弟弟子が持ってきたのは二本の線香花火。
時々手を繋ぐ。稀に唇を触れ合わせる。この関係には名前がない。
儚い火の花が消える前にした賭け。もしも途中で落ちたなら、こんな風にはもう逢えない。そう言ったお前の顔は泣き笑いめいてた。
花よどうか最後まで。臆病者の背を押してくれ。

紫陽花の前で そっと手を握った 兄弟弟子以上恋人未満の義炭

貴方の手をそっと握った。霧雨にけぶる紫陽花を、見つめる貴方が消えていきそうで。
小さく首を傾げる貴方を濡らす、雨を遮る傘はない。
手を握っても厭われない距離にいるのに、雨の中の貴方はどこか遠くて怖くなる。
水に連れ去られる前に、どうか貴方を繋ぎとめる権利を下さいと、握る手に力を込めた。

真夏の太陽の下で 愛おしさに目を瞑る 三年ぶりに再会した義炭

陽炎に揺らぐ視界の先に見えるのは幻覚だろうか。幻覚であればいい。現実であってほしい。相反した思考に眩暈がした。
泣きそうに目を潤ませつつも、お前の顔は怒りを湛えている。
三年前より大人びた声が、もう逃がしませんと怒鳴った。抱き着かれて目を閉じる。夢じゃなかった温もりを抱き締めた。

流れ星を見つけた日 くすくすと笑い合う 明日別れる義炭

耶蘇教では流れ星に願いを言えば叶うと聞いた。
流れ星を見つけられずに落ち込む俺に、貴方はくすくすと笑う。あんまり穏やかな笑顔だから俺も思わず笑い返す。
本当に明日死ぬんですか?と問えば、多分と答えた貴方が、星じゃなくお前が叶えてくれと口にした願い事。
来世の恋を約束した背で星が流れた。

プラネタリウムで 馬鹿だなと笑った 恋人同士のぎゆたん

手を繋ぎ星空を眺める。満天の星は偽物だけれど気にしない。暗がりでなら繋げる手がちょっぴり切なくて、だけども嬉しい。
星が流れた。
一生一緒と三回唱えようとしたけど、三回目を言い終える前に星の尻尾は消えてしまった。
しょんぼり隣を見たら、馬鹿だなと笑って星より俺に言えとキスが落ちてきた。

イチョウ並木の黄色に染まって ごめんなさいと泣く 恋人未満の義炭

落としちゃってごめんなさいと、泣く弟分の手にはソフトクリームのコーンだけ。
舞い散るイチョウの葉に見惚れて転んでできた擦り傷より、罪悪感に弟分は泣く。
俺のを半分こしようなんて言えるのは、一体いつまで許されるだろう。二人で顔を寄せあって舐めたソフトは、甘いのにちょっぴりしょっぱかった。

コンビニからの帰り道 馬鹿だなと笑った 両片想い義炭

時刻は夜8時。買い物に来て先生と偶然会った。
互いの家の中間にあるコンビニなら不思議はないのに、運命を感じてときめくなんて馬鹿だな。
危ないからと送ってくれる先生に、どうしてそんなに優しくしてくれるんですかと訊く声が震える。馬鹿だなと小さく笑って、分からないか?と握られた手が熱かった。

階段の踊り場で あなたが好きですと笑う キメ学義炭

追いかけっこのゴールはいつも生徒指導室。チャイム前に捕まえれば、束の間の逢瀬。
なのに今日は何故だか階段の踊り場で子供は止まった。訝しみつつ捕まえれば、貴方が好きですとお前は笑う。
卒業まで色んな場所で言うから思い出して下さいねなんて。常に思っているのに思い出すもないだろと苦笑した。

朝露の草原で 手首を掴んで引き寄せた 恋人同士のぎゆたん

終の棲家は小さな家。周囲は見渡す限り草の海。
時折あの子は夜明けに褥を抜け出し、ふらりと草原へ。数分おいて後を追えば、朝露で足元を濡らしながら一心に夜明けを見つめる後ろ姿。
そっと近づき手首を掴んで引き寄せると驚く様子もなく笑う。
朝日に照らされ伸びた影が、いつまでも一つであればいい。

蝉時雨を聴きながら 愛してると告げる キメ学義→炭

夏合宿の最終日。案の定、元気なのは一人きり。蝉時雨が響く中、石段に腰かけお喋りな教え子に相槌を打つ。
これで引退かぁと呟く声が、寂しげながらも清々しい。沸き上がったのは寂寥と焦燥。胸中でごめんと詫びながら抱き寄せる。
固まる子供に囁いた、愛してる。
逃げるなら早く。唇を奪ってしまう前に。

ひまわり畑で 嫌いですと嘘をつく 同棲ぎゆたん

黄色い大輪の花を見つめる瞳が優しくて、なんとなく面白くない。口元が薄く微笑んだりしてたら、その顔は俺のものなんじゃ!?って苛立ったりして。
思わず向日葵って俺は嫌いですなんて嘘を吐いた。
びっくりした顔でお前に似てるのに?なんて言われたら、夕飯は鮭大根にしますとしか言えなくなった。

水族館の大水槽の前で 繋いでいた手を離す 両想い義炭

急な出勤でデートはキャンセルだと思ったのに、突然の電話は今から行くぞ。
閉館間際の水族館に慌てて走り込み、大水槽の前で並んで周遊魚を眺める。急げと引かれていた手もそのままに。
不意に手を離されたと思ったら抱き締められた。慌てる俺に誰もいないからと笑う。ねぇこれが狙いだったりします?

春の陽射しの中で あなたが好きですと笑う 恋人同士のぎゆたん

のどかな春の陽気に誘われ散歩する。土手を黄色く染める菜の花に目を輝かせ、菜の花好きなんですと恋人が笑う。
桜も好きだし雪も好き。月が好きで雨も好き。恋人の好きはたいそう多い。
でも一番貴方が好きですと笑うお前に、俺は一から百まで好きなのはお前だけと返したら、一体どんな顔をするだろう。

さみしい冬の日に 忘れてくれと呟く 同棲ぎゆたん

ゼミ合宿から帰った俺を待っていたのは、極寒の部屋と毛布でぐるぐる巻きな恋人。聞けばエアコンが壊れたのに修理を忘れていたという。
毛布に埋もれて落ち込む様子が可愛くて、一人寂しく震えていた貴方には悪いけど珍しい姿を見られてラッキーと笑えば、頼むから忘れてくれと情けない声で呟かれた。

水族館の大水槽の前で 奪うように唇を重ねる 両想い義炭

頭上を泳ぐペンギンに目を奪われ、イルカのジャンプにはしゃぐ休日。初めてのデート。
大水槽の前で突然抱き寄せられ、噛みつくようにキスされた。やっと解放されたと思ったら、魚ばかり見てるなとの声。
陸に上げられた魚みたいに、はくはくと唇をおののかせたら、貴方は魚よりいいだろと不敵に笑った。