果たして、月が清かに照るころには、炭治郎の予想はそのとおりの仕儀と相成った。
枕元に置かれた文箱から取り出された紙は、炭治郎の尻の下に敷かれている。脇にある小鉢のなかで、義勇の指がちゃぷりと油をかき混ぜた。
揺れる行燈の灯りに照らされる義勇の指は、淫靡にぬめりながら光っている。こくりと生唾を飲んでしまった炭治郎に、義勇はうっすらと笑った。ぽたりと胸元に落ちた油のしずくにすら、炭治郎は腹を波打たせ、ビクビクと感じ入ってしまう。そんな様子に、義勇はいたく満足げだった。
大きく広げられた炭治郎の脚を一度なだめるようになでると、義勇は、油をまとわせた指をゆっくりと秘口へ差し入れてきた。
油を塗りこめられるようにぐにぐにと指を動かされるたび、んっ、んっ、と、炭治郎の口から子どもがむずがるような声があがる。鼻にかかった、やけに甘ったれた声だ。
ときどき、閨のなかで炭治郎は、自分が赤子にでもなったような気持ちになる。口から出るのは喃語のような意味のない音ばかりになって、抱っこをせがんで泣く子どもだ。
舌っ足らずに名を呼ぶたびに、義勇はひどくやさしく炭治郎を抱きしめてくれる。そのやさしさは、子を抱く父のようでもあったかもしれない。けれども、安堵を呼ぶ抱擁とは裏腹に、ぐっと身のうちにおさめられた因果骨1男根は燃えたつように熱く、容赦なく、炭治郎の秘所をうがった。むずがゆさを覚えていたそこを、熱い肉棒でこすられるだけで、痛みや圧迫感を凌駕する快感に放心しそうになる。快楽に翻弄されるのは、自制心に富む炭治郎にはつらく、けれどもたとえようもないほどの多幸感をもたらした。
丁子油でぬめる媚肉が、ぐちゅり、ぐちゃりと、湿った音をたてた。パンッと肉を打つ音が響くたびに、かき消すように炭治郎の声が高く細くあがる。それだけでも体の芯がジンジンとしびれるような心地がするというのに、濡れて震える花芯を握りこまれ、秘所をうがたれながらもまれれば、いよいよ赤子のような声しか出せなくなった。
寄せては返す波のように、炭治郎のあげる声は高く、低く、大きく、小さく、絶えることなく上がりつづけた。ゆすぶられる体は、波間に漂う小舟のように翻弄されている。
義勇は、閨でも水のようだ。穏やかな凪の湖面のようにやさしく抱きしめ、荒ぶる波のように炭治郎をさらう。やけどしそうに熱い湯にさえもなる、水である。
あぁ、溺れる。
追いつめられ、追い立てられ、体はどんどんと浮遊していくようなのに、意識はどこか深みへと沈んでいく気がした。義勇という大いなる水に飲みこまれて、溺れていく。沈む、沈む、けれども、浮く。
グンッと強く突き入れられ、炭治郎の口からひときわ高い嬌声がほとばしり出た。潤む目で見上げた義勇の顔は、いつもの涼やかさなど感じさせず、ひたいに汗さえ浮かんでいる。わずかに眉を寄せた様は、恍惚として見えた。
義勇の頬から顎先への伝った汗がひとしずく、ポタリと炭治郎の口元に落ちた。ふと義勇の目が細まる。笑みはどことなし享楽的で、義勇らしからぬ表情だとも思うのに、炭治郎だけが知るすの義勇だという気もした。
うっそりとした笑みはそのままに、義勇の顔が近づいて、唇の端をちろりとなめてくる。落ちた汗をなめ取られたのだと、理解したと同時に胸に湧いたのはもったいないという言葉だ。けれどそれもすぐに消えた。達したばかりだというのに、したたる蜜のように義勇からあふれ出る色香に飲まれて、ゾクリと炭治郎の背が震える。
今宵も、ぐっしょりと濡れる檀紙は、一枚では済まなさそうだ。
ぼんやり思って、幸せだと、炭治郎は薄く微笑んだ。