彼岸花が枯れるまで【あらすじ&人物設定】

あらすじ

 姉をレイプし自殺へと追い込んだ犯人達を殺害した義勇は、少年刑務所に服役した。そこで性欲処理の対象とされることを自分への罰だと受け入れていた義勇は、強姦殺人により服役してきた錆兎と出逢う。
 錆兎の罪状を嫌悪し反発する義勇だったが、正義感の強い錆兎とそんな犯罪は結び付かず、錆兎に問い質した義勇は、錆兎が多額の謝礼の代わりに犯人の代わりに自首したのだと知る。
 錆兎は児童養護施設出身で、そこで共に育った真菰の病気治療の為だった。
 姉を殺した輩と同類の真犯人を庇った錆兎に、最初は怒りを爆発させた義勇だったが、錆兎の誠実さに心を開いていき、やがて二人は親友へとなる。
 錆兎に先んじて出所した義勇は錆兎のいた児童養護施設を訪ねるが、施設長の鱗滝との会話で、真菰の治療費だけでなく養護施設そのものが立ち退きを迫られていることを知る。

「俺が、代わりに守るから」

 立ち去る間際、施設を見ながらそう決意した義勇に、「お兄ちゃんが守ってくれるの?」と声をかけてきた子供がいた。幼いその子と指切りし、守ると約束した義勇は、出所時に声をかけてきた男が言っていた金になる仕事に乗ることにした。
 連れて行かれた場所は組事務所で、義勇は、組長である鬼舞辻無惨の囲われ者として組入りすることに。
 数年の間に組内で頭角を現していく義勇。そんな中、義勇はボランティアの炊き出しをしている炭治郎と出逢う。
 快活な炭治郎の笑顔や真っ直ぐな気性に慰められる義勇。炭治郎もまた義勇の分かりにくい優しさや拭いきれぬ翳りに惹かれ、二人は想い合うようになっていく。
 炭治郎は錆兎のいた児童養護施設出身で、現在は工場勤務で寮生活だった。しかし、育ちから偏見の目で見られ、工場内での盗難騒ぎの犯人扱いされ、工場を辞めさせられてしまう。
 自分が極道だと言えずにいた義勇だが、古いアパートの一室を秘密裏に用意し、炭治郎に一緒に住もうと提案する。
 義勇は、炭治郎と結ばれようとも決してその時に衣服を脱がない。鬼舞辻によって背に掘られた彼岸花の白粉彫りは鬼舞辻のお気に入りで、爪あと一つでも残せば炭治郎のことが露見する恐れがあった。
 二重生活に疲れていく義勇。些細なことで炭治郎に苛立ちをぶつけてしまうが、炭治郎は全てを承知していたことを知る。
 義勇が鱗滝の児童養護施設で出逢った子供は炭治郎だった。
 その時から貴方のことがずっと心配で、ずっと好きでしたと微笑んだ炭治郎を抱き締め、義勇は組を足抜けすることを誓う。
 しかし、鬼舞辻の弱みを握ろうとした義勇は、その現場を抑えられ、鬼舞辻が全てを知っていたことを告げられる。
 しかも、姉の死は自殺ではなく首を絞められての縊死であり、主犯だった警察官僚の息子の罪を隠すために自殺に見せかけたのが鬼舞辻だったことを知る。笑いながらそれを語る鬼舞辻が義勇に向けて放り投げたのは、その日姉が義勇の為に用意した誕生日プレゼントだった。
 遺書として扱われていた「ごめんね、義勇」と書かれたカードは、本当はその数日前に喧嘩をしてしまった義勇への仲直りの言葉だった。
 全てを狂わせたのが鬼舞辻だと知った義勇は怒りの銃口を鬼舞辻に向けるが、ボディーガードたちに阻まれる。現れた男たちは倒したものの、背後を取られ、鬼舞辻の銃が自分に向けられていることを悟った義勇は自分の腹に銃口を押し当て引き金を引いた。

「神様……くそったれな神様。一つだけでいい、願いを聞いてくれないか。もう一度だけでいいんだ。もう一度だけ、綺麗なものを見せてくれ……最期に、炭治郎の笑顔を見て、逝きたい……」

「ねぇ、義勇さん。俺もあなたと同じ罪人ですよ。だって、貴方はこのまま死んだ方が楽だったんでしょう? でも、死なせません。俺と生きてください。生き地獄の中で、生きてください。貴方がいるだけで、地獄でも俺は幸せだから」

人物設定

冨岡義勇
十七歳→二十八歳
 十七歳の誕生日前にたった一人の肉親である蔦子と喧嘩をし、その仲直りの為にと外食に誘ってくれた蔦子が集団レイプの末に自殺したことを、自分の所為だと思っているため、自虐的かつ排他的な振る舞いが多い。
 犯人達を独自に突き止め殺害。被害者三名、完全な殺意を持っての計画的犯行という重大事件ではあったが、姉の件で情状酌量され懲役五年の実刑判決。少年鑑別所ではなく少年刑務所入り。
 入所してすぐに集団レイプされ、以降は性欲処理の対象とされるも、それが自分に課せられた真の罰だと受け止め抵抗せずにいた。
 入所してきた錆兎と出逢い、殴り合いの末、心を開き合い親友に。
 二十二歳で出所後、錆兎の育った鱗滝の児童養護施設を訪れた際に、錆兎が犯人の身代わりになって得た謝礼で真菰は命を取り留めていたものの、継続的な治療に金は必要であり、更に施設が立ち退きを迫られていることを知る。
 そこで出逢った子供(炭治郎、当時10歳)と、必ずここは自分が守るから誰にも自分のことは言わないようにと、約束を交わす。
 施設を救うために借金元である鬼舞辻の組へ向かい、鬼舞辻の囲われ者に。
 背に彼岸花の白粉彫り(別名、水彫り。普段は見えず肌が紅潮した時だけ浮かび上がる。墨を一切使わない為、彫りが定着するまで何度も繰り返し傷の上に針を刺して作り上げる。※実際には存在しない彫り方でありフィクションであることをご了承ください)を入れさせられており、体質的に消えやすいそれを定期的に彫り直されている。
 鬼舞辻の所有物の証である背の彼岸花を心の底から憎み、手入れの日の拷問のような痛みに怯えてもいる。
 鱗滝の施設を守り続ける為にはその一帯の管轄を自分のシマにするしかなく、自身を押し殺し鬼舞辻に組の役に立ちたいと願い出て、汚れ仕事に手を染める。
 組員として頭角を現していき、二十八歳で鬼舞辻の右腕扱いされるほどの幹部に昇り詰める。
 住まいは鬼舞辻の用意した高級マンション。義勇は鬼舞辻に抱かれるための部屋としてしか認識しておらず、寝に帰るだけ(鬼舞辻に抱かれるためのベッドやソファでは眠れず、常に床に転がって寝ている。銃は眠る時でも携帯)。
 少年時代から普通の生活とは切り離されて生きてきたため、一般人の認識からすると割と頓珍漢なことをしがち。
 組が立ち退きを迫っている場所でボランティア活動をしている炭治郎と出逢い、初めての恋に落ちるも、自分の素性を話せず苦しむことになる。
 髪を伸ばしだしたのは組入り後。鬼舞辻の命令で伸ばし始めたが(鬼舞辻は義勇の黒髪の間から彼岸花が見えるのを、闇夜に咲く彼岸花と称している)、蔦子と同じ髪質である為、蔦子を思い出すよすがとしている部分もある。
 炭治郎と暮らしだしてからは、炭治郎が髪を乾かしてくれる手付きに蔦子の手を思い出し、癒されている。

竈門炭治郎
 義勇とは十二歳差。十六歳。
 両親を早くに火事で亡くし、妹の禰豆子と共に鱗滝の児童養護施設に入った。当時十歳。(禰豆子は九歳)
 額に火事の時の火傷の跡が痣のように残っている。
 父の形見であるピアスを、禰豆子を守る決意の証として、真菰に頼んで付けてもらった。
 風邪で学校を休んだ日に、施設を訪れた義勇と鱗滝が話しているのを聞いてしまい、施設を守ると口にした義勇と指切りし「約束」を交わす。
 鱗滝の施設が経営難なのを心配し、早く禰豆子を引き取り一緒に暮らすため、中学卒業と共に就職。工場の寮で暮らしている。
 明るく優しい性格で周囲に愛されているが、工場長に迫られ拒んだことから何かにつけて理不尽な嫌がらせを日々受けている。
 休みの日には禰豆子と共にボランティアの炊き出しをしていたが、その場所は鬼舞辻組が目を付けていた場所であり、炭治郎は真っ向から反発していた。
 素性を隠し視察に来た義勇と出逢い、義勇が鱗滝の施設を守ると約束してくれた「お兄ちゃん」だとすぐに気づくが、義勇の心情を推し量り「約束」を守るために黙っている。
 ぎこちなく自分に接する義勇の優しさに、自分の心の支えになってくれていた「お兄ちゃん」への想いが恋だと自覚。恋心を募らせていく。
 義勇の世間知らずな言動や匂いなどから、裏社会の人間だと薄々気づいている。
 義勇と交流を深めていったある日、工場で盗難騒ぎが起き、工場長から犯人扱いされる。施設育ちであることや、禰豆子を引き取り一緒に暮らす為に金を貯めていることなどから、お前が盗んだのだろうと濡れ衣を着せられ工場を辞めさせらることに(真犯人は当の工場長。周囲は工場長に目をつけられることに怯え炭治郎を庇えなかった。後に工場長は「何者」かにより悪事が露見、家庭崩壊後「事故死」する)。
 寮も追い出されることになり、鱗滝を頼り心配させるわけにもいかず夜の街で荷物を抱え一人でいたところを義勇に見つかって「一緒に暮らさないか」と提案される。
 家事を引き受けることを条件に同居を了承。1Kのアパートで二人暮らしを始め、義勇と結ばれる。
 素性を打ち明けてくれず、また、決して服を脱がず後からしか抱いてくれない義勇が、少し不満で心配もしていた。
 些細な言い合いになった時に、義勇が疲れと自責の念を爆発させ、そこで初めて義勇との本当の出逢いと義勇の素性に気づいていたことを打ち明ける。
 初めて背の彼岸花を見せてもらい、その背を抱き返すことを許されたことに幸せを感じている。
 義勇の背の彼岸花の白粉彫りが、いつか消えることを心の底から願っているが、その為に義勇が無理をするのを心配している。
 義勇と同居後のバイト先は、義勇の紹介で入った喫茶店「藤」(経営者はふさ)。
 義勇から炭治郎の護衛を言い付かり常連として店に入り浸る村田と後藤とも、生来の明るさと誠実さで仲良くなる。
 いつか禰豆子と義勇と三人で暮らせることが夢であり、目標。義勇から高校への入学を勧められているが、その目標の為、学校へ行くより働きたいとバイトに勤しむ(義勇は頼られないことに不満げ)。
 義勇の髪を乾かしたり梳かしてあげるのが好きで、義勇がいる時は日課にしている。

錆兎
 義勇と同年齢。(二十八歳)
 強姦殺人の罪により義勇より1年遅れて少年刑務所入り。懲役七年。
 鱗滝の児童養護施設で赤ん坊の頃から育つ。同時期に施設に入った真菰を妹のように想っていたが、真菰の病気の発覚と共に真菰を愛していることに気づいた。
 真菰の治療費の為に、罪悪感や正義感に苦しめられつつも、多額の謝礼と引き換えに真犯人の身代わりとして自首する。
 鱗滝の施設が自分の決断の為に世間の目に晒されているであろうことを自覚しており、自分への本当の罰として、真菰と二度と逢わない決意をしている。
 刑務所内では性犯罪者はもっとも蔑まれる最下層(蔑称:ピンク。現在はオレオレ詐欺が最下層という話も聞きますが)だが、明るく義侠心に溢れる性格で周囲から信頼されていく。
 少年刑務所で義勇が性欲処理の道具のように扱われている場面を目撃し、義勇を庇い乱闘。一対多数で相手を叩きのめしたことから、周囲からボスとして扱われることになった。
 錆兎自身はそんな上下関係を馬鹿馬鹿しいと思っており、ボス扱いにうんざりしている。
 乱闘以来義勇を気にかけるが、義勇は余計なお世話だと反発。自虐的な義勇を案じ、なにかにつけ義勇を庇う。その為、周囲からは義勇は錆兎のオンナとして扱われるようになり、性欲処理の対象から外れることになる。
 錆兎が犯したにしては違和感しかないと、罪状に疑問を抱き問い質してきた義勇にだけは、自分が真犯人の身代わりであることを告げる。
 それまで一切の感情を見せなかった義勇が、錆兎の告白に怒りを爆発させたことで殴り合いに。
 懲罰房入りさせられた夜に、壁越しに「お前がしていることは自虐でしかない。お前の姉さんはお前が自分と同じ目に遭うことを願う人なのか?自分も本当の罰はきっといずれ受けることになる。お前に罪があるとしても罰を決めるのはお前自身じゃない。いつかお前にも逃げようのない天罰が下る時が来る。その前に自分を痛めつけるのは、ただの逃げだ」などと義勇を諭し、義勇の親友となる。
 25歳で出所。鱗滝にもう二度と姿を現さないと手紙で告げ、行方を教えることなく単身北海道へ。
 真菰の夢である競走馬の生産育成牧場に勤め、いつか自分の牧場を経営することを目標にしている。自分が育てた馬が大舞台で活躍するのを、真菰に見てもらうのが夢。
 義勇以外とは連絡を取らなかった為、真菰が行方を探し出し逢いに行くまで、施設の事情や義勇のその後を知らずにいた(義勇が全てを隠していた為)。

鬼舞辻無惨
 年齢不詳。見た目は二十代後半から三十代前半。
 鬼舞辻組組長。仁義や義理人情を一切考慮しない冷酷無比な強引さで、組の立ち上げ直後から縄張りを広げ続けている新興勢力。
 警察組織とも裏で繋がりを持ち、不祥事の後始末などを請け負うことで、警察や法曹界との太いパイプを築いている。
 子飼いの組織が増えつつあり、鬼舞辻組は全国的な一大勢力となっているが、内情は一枚板とは言えず、無惨自身は幹部たちの勢力争いを楽しんでいる節がある。
 十六歳の義勇が街で姉と一緒にいるところを見初め、手に入れる為に調査させていたさなかに、蔦子の事件が起きた。
 警察官僚の息子が主犯だった為、殺人を自殺に偽装し強姦の身代わりを立てる依頼を受ける。
 目撃証言の揉み消し中に、義勇のほうが先に犯人を突き止め殺害に及んだことで、その行動力と執念に自分の玩具としてだけでなく、組の役にも立つと判断。ますます義勇への執着を深める。
 日光に弱い体質であり、青空や海を思わせる義勇の瞳がお気に入り。
 少年刑務所の刑務官を買収し、義勇の監視をさせていたため、錆兎と義勇の交流を知っている。
 鱗滝の施設に圧力をかける為に手を回し、出所した義勇が自ら鬼舞辻の元を訪れるよう画策する。
 義勇の背に掘らせた彼岸花の白粉彫りが、抱いている最中赤く色づく様を気に入っており、傷をつけることを禁じている。刺青の手入れと称して義勇へのお仕置きに利用したりもしている。
 義勇が自分も組の為に働きたいと言い出した真意を知りつつも、それを受け入れ縄張りを任せマンションを用意するが、マンションには隠しカメラが幾つも設置してあり、義勇を監視している(義勇は把握済み)。
 義勇は特にお気に入りの「玩具」だが、義勇の怜悧な美貌には感情は必要ないと考えている為、義勇に任せる仕事は冷酷なものが多い。
 いずれ義勇が完全に打ちのめされ自分の手に落ちることを疑っておらず、義勇の内心の反抗を束の間の抵抗と楽しんでいる(意に反した時のお仕置きも含めて)。
 炭治郎や鱗滝の施設については、義勇の心を完全に壊す為の材料としか思っていない。一番効果的なタイミングを狙って、義勇にはある程度の自由を認めている。
 同様に、蔦子の遺品となった義勇へのプレゼントも、義勇の心を打ち砕く材料として保管。そのプレゼントは義勇への最後通牒と共に投げ渡されている。
 自室や組事務所の部屋には特別製の防弾ガラスの衝立があり、自身も防弾ベストを着用するなど、用心深い。義勇との行為の際も、基本的には服を脱がず銃も手放さない。
 義勇が鬼舞辻の悪事の逃れようのない証拠を集めだしたことで、義勇への最終警告且つ完全に支配下に置くために、鱗滝の児童養護施設への放火、および、炭治郎の殺害を部下に指示。放火は義勇から気をつけてほしいと言われていた不死川が、炭治郎殺害は村田と後藤が鬼舞辻への恐怖より義勇と炭治郎への友愛を取ったため、阻止。
 部下は側近幹部であろうと駒の一つでしかなく、誰のことも信用していない。
 完全なワンマン体制であった組は、義勇による鬼舞辻殺害後、内部分裂。解体の憂き目に。

猗窩座
 三十三歳。
 鬼舞辻組幹部の一人。
 義勇が組入りした時から、やたらとちょっかいをかけてくる。
 鬼舞辻のイロ(情人)である義勇を馬鹿にするような言動が多い。しかし、義勇の「仕事」を裏でカバーするなど、義勇を気に入っているようなそぶりも見せるので、義勇からは不信感を抱かれている。
 実は警察の潜入捜査官。本名は狛治。
 潜入捜査に入るより以前に警察学校の恩師と呑んだ際、どう見ても殺人事件だったのに自殺として処理した強姦殺人事件があり、その被害者の未成年の弟が復讐の為に殺人を犯し服役したことを悔やんでいると告げられ、当時の警察の対応に疑惑を抱く。
 事件発覚当日にはマスコミが騒ぎ立てた少年Aによる三名に及ぶ殺人事件が、すぐに収束し続報がなかったことを覚えていた為、教官の話と結び付け調べた結果、少年Aの本名が冨岡義勇であることを知った。
 組で出逢った義勇が少年Aだと気づき、警察による隠ぺい工作の被害者であるとの認識を持つため、鬼舞辻の手から救い出したいと思っている。
 義勇が足抜けの為に動き出していることを察し、足抜け後の資金調達などを秘密裏に行い、義勇が鬼舞辻を殺害後に逃亡を促す。
女房の恋雪に、自分の本当の素性を言えないことを悩んでいる。

不死川実弥
 二十八歳。
 県警刑事部捜査四課(通称マル暴。広域指定暴力団や外国人犯罪を扱う)在職。巡査部長。
 鬼舞辻が警察内部と繋がっている証拠を掴むため、組内のエス(スパイ)を得られないかと探っている内に、シマを任された義勇と出逢う。
 無感情な義勇の態度は気に入らないが、時々義勇が見せる絶望的な孤独を感じさせる瞳が気になっている。
 義勇と炭治郎の繋がりを知り、最初は炭治郎が騙されているのではないかと心配し接触するが、義勇が暴力団員であることを告げたところ炭治郎の反発にあう。
 当の炭治郎から義勇の素性を知っていること、自分の意思で義勇の傍にいることなどを聞かされ、義勇を庇う炭治郎の認識の甘さに苛立つ。
 しかしながら、炭治郎の言う義勇が抱えている孤独と自己犠牲には、思い当たる節がないわけではなく、調べていくうちに義勇の殺人は、警察内部の隠ぺい工作が一因を担っていることを知る。
 義勇自身の罪を許す気はないが、義勇に任されて以降シマでの強硬な立ち退きやみかじめ料の強要がなくなったことについては、一応の評価を下している。
 義勇から鬼舞辻の義勇への執着と、おそらくは炭治郎たちだけでなく鱗滝の施設も鬼舞辻の手が回る可能性があることを告げられ、「気にかけてやって欲しい」と頭を下げられる。

竈門禰豆子
 十五歳。
 火事の際に一緒に寝ていた炭治郎に連れ出され、一命を取り留める。炭治郎と共に鱗滝の児童養護施設に。
 兄同様に明るく世話焼きなしっかり者だが、大きな火にはトラウマから怯えてパニックになる。
 炭治郎と共に炊き出しのボランティア活動をしている時に、義勇と出逢う。
 全てにおいて炭治郎が禰豆子のことを優先し、自分自身の幸せを一切顧みないことを気にしているため、炭治郎が初めて独占欲を見せた義勇への恋を応援している。
 義勇が暴力団員であることは知らない。
 真菰に懐いていて、炭治郎の恋を応援するのと同様に、真菰が錆兎と再会し結ばれることを願っている。
 炭治郎のバイト先で時々手伝いをするので、村田&後藤とも顔見知りに。

真菰
 二十七歳。
 錆兎とは同時期に鱗滝の養護施設に預けられる。
 十五歳で心臓に欠陥が見つかり、入退院を繰り返す。十七歳で病状が急変、海外での手術が必要に。錆兎が強姦殺人の犯人の身代わりとして自首したことを知ることなく渡航。
 錆兎が手術費用を工面したことは察していたが、その手段については帰国まで知らずにいた。
 帰国後は鱗滝の施設で働きながら、錆兎の行方を探していた。
 鱗滝の影響で幼少期から競走馬の生産育成に興味を持ち、夢は自分の牧場を持つこと。手術は成功したものの継続的な治療は必要であり、無理の利かない身体になったが夢を諦めてはいない。
 禰豆子と炭治郎を弟妹のように可愛がっている。炭治郎が恋した相手(義勇)が鱗滝から聞いた錆兎の友人だと気づき、継続的な多額の寄付を断るが義勇には「心当たりがない」と突っぱねられる。
 地方競馬の中継で一瞬映った錆兎を見つけ、北海道にいることを突き止め、単身逢いに行く。

鱗滝左近次
 七十代前半。
 児童養護施設を経営。以前は競走馬の生産育成牧場を経営していたが、外国産馬の台頭により経営難に。最悪の結果になる前にと牧場を畳み、友人(桑島慈悟郎)の経営する児童養護施設の施設に勤める。
 桑島の病死以後、経営を受け継ぐ。
 錆兎一人に苦難の道を歩ませてしまったことを後悔している。
 錆兎の友人だと名乗った義勇が訪れて以降、匿名で多額の寄付が定期的にされるため、義勇が送り主ではないかと思っている。錆兎と同じように義勇が無理をしているのではないかと案じているところに、ふさの話で義勇が組入りしたことを知る。
 借金返済後は、いつか義勇が足を洗えた時の為にと寄付金には手をつけずにいるので、やはり経営は厳しい。
 義勇の心を完全に砕く目的の為、鬼舞辻により施設が放火された後は、施設の子供たちと共に故郷の北海道へ渡る。
 児童養護施設を再び開き、錆兎と義勇の牧場の場長を兼任する。

村田&後藤
 二十八歳と三十一歳。
 鬼舞辻組の三下コンビ。学生時代に負った借金で道を外れたものの、二人とも自分は極道は向いていないと思っている。
 義勇がシマを任された時に、義勇の補佐をするよう指示を受けた。同時に義勇の下についた矢琶羽は鬼舞辻の命令を受けた義勇の監視役。
 組長のイロだと言われている義勇をどう扱うべきかと、最初は戸惑っていた。
 部下に居丈高に振舞うことなく、シマでの非道な振る舞いを禁じる義勇の極道らしからぬ様子などから、義勇の本質が情が深く優しい男だと知り、義勇の役に立ちたいと考えるように。
 炭治郎と出逢った義勇が、人並みな感情表現をするようになってきたことを喜んでいる。
 義勇の命令で炭治郎の護衛につく。どちらもゴロマキ(喧嘩)はそこそこ強いが、人を害することは苦手。
 鬼舞辻から炭治郎殺害を命令されるも、それに逆らい義勇の助太刀を決意。組事務所に駆け付け、瀕死の義勇を猗窩座から任される。

ふさ
 八十代前半。
 義勇のシマにある喫茶店「藤」の経営者。桑島が経営者だった頃に施設で働いていた為、鱗滝とは懇意。
 鬼舞辻組にみかじめ料を支払ってはいるが、義勇にシマが移って以降取り立てが穏やかになったことで義勇に礼を言いに行き、義勇を驚かせている。
 それ以来、義勇が時折ふらりと訪れるのを温かく迎えていた。