青に恋して (現パロ)
久しぶりのデートで、やってきたのはお馴染みの水族館。目新しいものはとくにないが、義勇と一緒なら何度来てもドキドキする。
水族館じゃなくても、義勇が一緒ならどこだって、炭治郎の鼓動は跳ね回るのだけれど。
義勇に思いを告げる前まで、青い水のなかを泳ぐ魚たちを眺めるのが、炭治郎はあまり好きじゃなかった。カラフルな魚たちが群れなす姿や、大きなエイが悠々と泳ぐさまは、感嘆に目を輝かせるものではあったけれど、それでもいつだって少し切なくなったから。
青い光に包まれた水槽の水は、義勇を思い出させた。そのなかを泳げる魚たちがうらやましくて、いつも炭治郎は知らず手を伸ばした。けれど、その手は恋しい水に触れることはなく、厚いガラスに阻まれる。
でも、今は。
「そろそろペンギンのショー始まるな」
「わっ、ホントだ。急がなきゃ」
ちょっぴり後ろ髪を引かれつつも、急ぎ足で歩く炭治郎の隣には、義勇がいる。伸ばしても届かなかったその手を、指を絡めて繋ぎあえるから、水族館はもう寂しくない。
ペンギンたちが空飛ぶ水槽を見上げて、炭治郎の心は、もっと雄大で優しい青のなか、自由に泳ぐ。愛しい温もりに、寂しかった手をそっと握りしめられながら。