○○を使わない140字小説お題さんからのお題で書いたSSです。2020年10月中(6日~)は一日一回更新します。多分。特に注意書きがなければ義炭です。分かりにくいので義炭は青、義勇受は灰色に変更しました。
※ぎゆたんスロットさんが復活してたので、たまに交じりますw ぎゆたんスロットからのお題は赤の見出しになります。
SS専用垢(鍵垢です)→●
お題:「いらだち」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
何本目の煙草だろう。灰皿に溜まった吸い殻に、小さく舌打ちした。ほんの一口二口吸っただけで消すものだから、早くも一箱空になりそうだ。
喧嘩の後の恒例行事。煙草を口にしても紛らわせるものは限られていて、口寂しさすら拭えない。拗ねて尖らせたあの唇に触れたいと思いながら、また煙草を消した。
お題:「明かりをともす」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
明るい部屋に帰るのが当たり前になって、どれぐらい経っただろう。まだ一年も経ってないはずなのに、明るさに慣れた今では、おかえりなさいの声が返ってこないと寂しくてたまらない。蛍光灯をつけた部屋がやけに暗く感じる。
玄関から響いたただいまの声に、視界が光を取り戻した気がした。
お題:「叫ぶ」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
※錆義で最終選別
張り上げた声が、彼の名前を連呼する。自分ではそのつもりだっただけで、喉が切れて血を吐くほどに呼ぶ名前は、もう明確な音になどなっていなかったかもしれない。
走り去る背中を引き留められないのなら、もう声なんていらない。意味のない音をあげ続ける自分の喉を掻きむしりながら思った。
お題:「うっかり」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
最初に浮かんだ言葉は、しまった。それから、わざとじゃない。目の前での失敗に言い訳もできず、怒り出すか嘆くだろうと身構えれば、お前は「怪我してないですか?」と割れたカップより俺の心配をする。
宝物だと言ってたくせに。謝れば、一番の宝物は無事だからいいと、俺の手を取りお前は笑った。
お題:「料理する」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
おさんどんは苦じゃない。炊事なんて得意なほうがやればいい。けれど、並んで台所に立つっていうのは存外嬉しいものだと知った。
クツクツと音をたてて煮えていく鮭大根は、いい出来栄え。ソワソワとした気配に笑って、味見どうぞとすすめたら、箸の先の大根じゃなく唇をついばまれた。
※ もういっちょ、違う意味合いで「料理する」 義勇受。お相手はお好きなようにどうぞw
さて、どうしてくれようか。しゅんと肩を落としてうなだれる恋人に、悪戯心をくすぐられる。
いつものように猫可愛がりに可愛がるのも楽しいが、珍しくも悄然とした風情を見ていると、ひたすら泣かせてみたくなった。 どうせその後は甘やかしぬいて、蜜に溺れるように可愛がってしまうのだろうけれど。
お題:「暑い」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
※義勇受で書いたつもりだけど、義炭でもいいような気もする……。
ギラギラとしか形容しようのない陽射しが眩しい。流れる汗で肌がぬめる。せめてカーテンを閉めてほしい。願いは声にならずに、開きっぱなしの口からは意味もない掠れた音ばかりが漏れた。
額や頬に貼りつく髪を、払ってくれる手は優しいのに、見据えてくる瞳は、焼きつくされそうな熱を孕んでいた。
お題:「地下室」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
※むざぎゆ 多分義勇さん鬼化 義勇受ばっかだな……
石造りの階段を降り、光の差さない部屋へ。火の気もなく日も差し込まぬ室内はかび臭い。 足を踏み入れれば、薄暗い室内では望めない晴天の青が、射抜くように睨みつけてくる。
この手に堕ちてきた空の青にうっそりと笑えば、獣のような唸り声が返された。
あぁ、心も早く堕ちておいで……私だけの、青。
お題:「孤独」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
隊服に袖を通したときから、ずっと、ずっと、寒かった。真夏の陽射しの下でさえ心はしんと冷えて、その奥で震えてうずくまっていた。時折感じる人の温もりも、いらないと拒んで。
有無を言わさず心の奥から引っ張り出して、ホラ、お日様が暖かいでしょうと笑ったお前こそが、俺のたった一つのお日様。
お題:「急いで」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
なにをそんなに焦ってるんだと、貴方は呆れたように言うけど、当たり前じゃないですか。
恋人になれても年齢差は変わらない。先生と生徒って立場も。
早く貴方と結ばれたいと焦るのは、怖いから。子供扱いされるたび、背伸びしたくなる。
そんなところが子供だと笑わないで。早く、早く、ねぇ、触れて。
お題:星降る夜に そっと手を握った キメ学義→←炭
亡くなったら星になると言ったのは誰だろう。満天の星空にふと思った。それが本当なら、あの煌めきのなかに父もいる筈だ。
合宿最終日の夜。起きてたのかとの呆れ声に振り返る。並んで暫し星を見た。恐る恐る握られた手に、片恋の成就を知る。星が流れて、父さんがおめでとうと言ってくれた気がした。
お題:「くっつく」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
ジグソーパズルみたいにピッタリはまってるのっていいですよね。磁石が羨ましい。接着剤が欲しい……絶対に離れないやつ。
言っては、なんでもないですと繰り返す。チラチラこちらをうかがってはため息つくから、遠回しすぎるだろ素直に言えと、思い切り抱きしめてやった。
お題:「ぬるま湯」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
ジェットコースターみたいに歓喜と不安の急降下を繰り返した、高校時代の恋心。今はそんな不安定さが嘘みたいに幸せを貪ってる。
貴方の腕の中は不思議。ドキドキするのは変わらないのに、まるで羊水のなかを揺蕩ってるみたいな安堵に包まれる
燃え尽きそうな恋よりも、幸せの温度で溺れさせて。
お題:「子ども」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
まろく柔らかな頬や、成長途中の伸びやかな肢体に、こいつは自分よりずっと年下なのだと思い知らされるたび、自制心が留まれと働く。
不満げに唇をとがらせる顔も、まだまだ幼い。なのにその目は欲を煽るぐらいには大人びているから、いっそ腹が立つ。
早く大人にと誰より願ってるのは俺だ、馬鹿者め。
お題:「ゆっくり」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
まどろっこしいほどゆるゆるとした動き。焦れて非難の目を向ければ、余裕綽々な笑みが返る。常の一気に燃え上がらされる手付きと違う緩やかな動きに、早くと口走りそうになって唇を噛んだ。
じっくりと欲火に炙られる。燃え上がることを許されないのに熱い。耐える俺に、煽るなと笑う瞳が燃えていた。
お題:「警告」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
※たぶん実義
もっと危機感を持てと何度言ったらわかるんだか。怒りを通り越し、とうとう呆れてため息をついた。おまえが好きだと宣った男の前で、うかうかと無防備な姿をさらすんじゃねぇ。言えば、好いてくれている奴の前で何故警戒を? と首をかしげる。悪意ばかりが身の危険だなんて思ってんじゃねぇよ、馬鹿。
お題:「寒い」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
吐く息が白い。肩で震える老いた鴉だけが、唯一の温もりだ。雪に散った赤を踏みしめて歩く。冷たさに感覚を失っう前に終わってよかった。
不意に心細いような焦燥に駆られた。傍らの温もりに慣れてしまった己を知る。体より心が凍えそうだなんて。言ったらお前は笑って抱き締めてくれるだろうか。
お題:「赤」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
夕焼け時は、今でも心なし落ち着かない。血の色を思い出させるからだろうか。燃え上がるような色は、いつでも血を想起させた。もう鬼はいないのに因果なものだ。
同時に思い出すのは、温かな瞳。いつかそう遠くない内に、夕焼けに思い出すのはあの子の笑う瞳ばかりになるのだろうなと、面映ゆく笑った。
お題:「エスカレート」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
公衆イチャつき禁止。揃って首を傾げる兄弟弟子。無自覚ですか、そうですか。恋の喜びに酔うにしても、人前では節度を持て。言えば、腑に落ちない顔で了承した。その結果が、片恋のような切ない視線にや初々しい戸惑い。見る者の胸やけはやはり留まるところを知らず、更に泥沼化した。なんてこったい。
お題:「英雄」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
並ぶ膨大な数の墓標に胸がつまる。無惨を倒した立役者と褒め称えられるべきは、自分ではなくここに眠る全ての人だと。傍らには静かな横顔。彼の心も俺と同様だろう。
大河の一滴。誰も彼もが称賛に値する。墓標が築いた未来を生きる。後悔で彼らの意思を穢さぬように。そっと手を取り、誓いに笑った。
お題:「愛してる」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
縁側に並んで腰かけ、他愛のない話をする。軒先でさえずる小鳥を見て、可愛いと微笑みあう。美しい朝やけに、隣にお前がいたらとふと思う。
お前と過ごす時間は優しい。そのすべてを慈しみたいのに、俺のなかにも鬼がいる。
お前のすべてを食い尽くしたいと、鬼が叫ぶ。欲しい欲しいと鬼が泣く。
お題:「指輪」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
まったり過ごす休日の昼下り。おやつにはお土産にもらったチョコレート。甘さを堪能しつつ傍らを見れば、恋人はなにやら手を動かしている。大きな手でチマチマと銀紙を撚るその顔は真剣だ。
出来上がった小さな輪っかに満足げにうなずいて、手を出せと言う。無粋なくせに甘いから、くすぐったく笑った。
お題:蝉時雨を聴きながら 繋いでいた手を離す 恋人未満の義炭
蝉が鳴くのは、番を求めているらしい。煩いほどに響き渡る恋の音を聞きながら、子どものように手を繋ぎ歩く。わずかな汗の匂いにまじり、ほのかに漂う恋の香り。互いに言葉にしないまま、境界線でたじろいでいる。
彼の手が離れた。それを悲しむより早く、そっと抱きしめられる。境界線を、今、越えた。
お題:「暴れる」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
初めて大きな喧嘩をした。声を荒げるだけじゃ足りず、地団太を踏んで、知らないあっち行ってくださいと、手当たり次第に物まで投げて。わめいて不満を爆発させるほど、心がシンと冷えていく。
もういいと舌打ちとともに、キスされた。
誤魔化す気かと言いたいのに、鼓動は勝手に歓喜に跳ねまわった。
お題:「失敗」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
勇み足という言葉がある。あまりいい結果は思い浮かばぬ言葉だ。早合点。これもまた結果は見えている。事実、結果は素っ裸のまま正座して、説教されるこの状況。
だが、おまえも拒まなかったじゃないか。たとえ俺の早合点による勇み足だとしても。
一夜のあやまちなんて言葉で終わるのは、勘弁してくれ。
お題:「四面楚歌」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
男同士だ。あの子の将来を思えば、想いを告げるなど論外だろう。なのに取り囲まれて、正座までさせられているこの状況。お節介どもめ。
当人同士の気持ちが大事だの、子供を作るだけが夫婦じゃないだの。諦めの材料をご丁寧に潰すな。
あの子の視線だけでこっちは息も絶え絶えだと、諦めの溜息をついた。
お題:クリスマスツリーの前で 泣くなと頬に触れる 同棲ぎゆたん
潮時なのかな。一緒に暮らして5年。名字の違う男二人。侘しいとのからかいに、愛想笑いするのも疲れた。
約束の時間を過ぎた。彼はまだこない。潮時なのかな。ツリーを見上げて、もう一度胸の奥で呟いた。
やってきた彼から渡された紙。泣くなと涙を拭う手は優しい。家族になろう。微笑む彼に頷いた。
お題:「甘い」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
アパートの外まで苺の匂いが漂っていた。ドアを開ければ一層強く香る。煮詰められていくジャムの匂いに包まれて、おかえりなさいと笑うお前の瞳は、苺よりも赫く瑞々しい。
味見しますかと言うから、ぺろりと舐めてやったらひゃあと叫ぶ。幸せの味に笑えば、拗ねて尖らせた唇。瞳より、きっと、もっと。
お題:「背比べ」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
※煉義 猗窩座戦ラスト
手合わせや飯の誘いの答えはつれない一言。俺のほうが背が高いなと笑ったときだけ、そんなことはないとの答え。背をあわせればほぼ同じ。冷ややかな彼は存外温い。
彼が命を賭ける子どもの声を聞きながら、もう一度背をあわせ、ほら君より大きくなったと笑ったらどんな顔するだろうかと、微かに思った。
お題:「金」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
朝日が眩く辺りを照らす。傍らに立つ彼のまつ毛の先が、朝焼けの名残を帯びて赤らむ陽射しを弾き、チカリと光った。
視線に気づき彼がこちらを向いた。
いつもはお喋りな口をつぐむ。今は言葉を発したくない。
輝く世界に二人佇み沈黙を聞く。言葉にするよりも強く互いの想いを伝える沈黙は、優しかった。
お題:「太陽」をテーマに(しかしその語を使わずに)140字SSを書いてみましょう
体を震わせ怒る。大粒の涙を落として泣く。明るく、温かく、笑う。あいつはいつも輝いて見える。あいつを見ていると、ほわりと心がぬくもる。
眩しくて、目をそらした。
衆生をあまねく照らす光を、独占するなどできやしないのに、手を伸ばしそうになる。触れたらこの身は焼きつくされると知りながら。