高き木々の重なりあう枝の隙間より、洩れ注がれる月灯り。照らし出すは黒衣の道士。瞳閉じ静かに煙管くゆらせている。
漆黒の髪を風が揺らすまま、ただ黙しなにを待つか。
「目当ては俺だけだと思ったが……読み違えたか?」
ぽつり呟く顔、緊迫と怒気をかすかに漂わせ、きりっと煙管の吸い口噛む。
日中からつきまといし気配は二つ。どちらも敵意殺気の欠片もなく、いっそ慕わしげにも思われたが、対象は連れの童子と己にはっきり分かれ。また、その有りよう雲泥の差。
童子に向けられたるを、包みこむよな清涼な風と称するならば、道士に向かいしは、ねとり絡みつくよな沼底の泥土思わせる。
陰陽明白に分れたる二つの気。己に向かうが陰の気であったは幸いよと、道士は口許かすかに笑み刻む。
漂いきては絡みつき、探らんとすれば立ち消える。敵意見えぬが真意も見えぬ、陰の気滲むこの気配。時折淫欲の色滲むのが、不快なことこの上ない。
この身に邪念いだきてのことならば、対処はいかようにもできようが、目的がそればかりとは思えぬのがまた、苛立たしくも腑に落ちぬ。
連れの童子ならば殺気悪意も一緒くた、斬って捨てればよきことよと自慢の刀振りかざそうものだが、目的知れぬは収まりが悪い。しばらくは離れていてもらうよりなかろうよと、道士は軽く肩すくめた。
苦笑しつつ道士の脳裏、思い浮かぶは、連れの童子の立ち去り際の面持ち。怒りあらわに悪態つけども、隠し切れぬ恋情逸らさぬ眼差しに乗せるよになったはいつからか。
「……あまり惚れてくれんなよ、クソちび竜子……」
笑みに自嘲漂わせ、道士は洩れ射す娥影ついと見上げた。
あの月のように果てることなくある命ならば、憂い逡巡なきものを。戯れと、言い捨てられたなら悩みもせぬ。
神ならざる、人なれば。身を焼く恋情、胸宿り、捨て去ることもできぬとあらば。
せめて惚れてくれるなと、思う一方愛しいと、想う心溢るるも止められぬ。
「俺もまだまだ修行が足りねぇな……」
発した道士のほかに聞く者なきまま、呟きは紫煙とともに風にさらわれ消えた。
さて、道士の呟きなど知るはずもなき連れの童子――ゾロはといえば、うつらうつらと眠りの狭間。
居心地悪い夕餉の後、不意に襲いたる睡魔に逆らい難く、笑う葉柱に促され横になってから四半刻ばかり。チョッパーも同様に傍ら眠り、健やかな寝息たてている。
瞼重く、起き上がるも大儀なれども、なぜだか眠りの底に落ちるは適わずに、意識ばかり夢と現の境漂わせている。
昼なお暗き妖魔の塒では、時の流れすら窺い難くあるが、おそらくはまだ宵の口。己のみならずチョッパーまでも眠りに落つるとは、さては何某かの術をかけられたのであろうかと、頭の片隅緊迫生まれるものの、意識は一向定まらぬ。
と、茫漠とした意識が、小さき声を捉えた。言わずと知れた葉柱とヒル魔の声である。
眠るゾロとチョッパーをはばかってか、その声いと小さくあるが、たしかに諍いの様相呈していた。とはいえ、剣呑な響きではなく、葉柱の声は切なる哀願とも受け取れよう。
一体何事かと、ゾロは気を抜けば朦朧とする意識を、二人の声に集中した。瞼開くは敵わぬが、肌身に感ずる気配はやはりなにやら諍いの途中であるらしい。
「いらねぇっつってんだろ、糞奴隷。何度も言わせんじゃねぇ」
「だけど、ヒル魔……」
「テメェ、そんなに餌扱いされたいのか。奴隷として仕えるよりも、家畜として飼われるのがお好みか?」
苛立ちあらわなヒル魔の声、嘲笑の響きたたえ。そのあまりの言いように、ゾロは胸中憤る。だが、躯はやはり己が意思のままにはならず、苛々とヒル魔への反発を胸に溢れさせるばかりである。
そんなゾロの苛立ちとうらはら、葉柱の声に怒りは露と感じられず。
「家畜はごめんだな。テメェを守れなくなる」
「……なら、余計な口出しすんじゃねぇよ」
「余計なことじゃねぇだろ。これもテメェを守るためだ」
弱きところなど奴らに見せてよいのかと、問うは葉柱の声。視線注がれる気配を感じ取り、自分達のことかとゾロは慌て息を殺す。
「……食事なんかしなくても、こいつらぐらいなんとでもなる」
「甘くみるなと言ったろうが。いいから食えよ」
「奴隷が主人に命令か?」
「カッ! 命令じゃねぇよ、頼んでるんだ。食ってくれ……ヒル魔」
言葉とうらはら二人の声に敵意はあらねど、やはり油断はできぬと思いつつ、ゾロは疑問を禁じえぬ。
たしかに食は細くはあったが、ヒル魔も夕餉は済ませている。それに、葉柱に対して餌だ家畜だとは、何故か。
「……そんなにご主人様に食われてぇのかよ。奴隷だから?」
ヒル魔の声音、先と同様嘲笑の響きに近しくはあるが、どこか切なげにも聞こえ。
「……是」
肯定の響き、葉柱の声、同量の切なさたたえている。
霎時の沈黙、やがて衣擦れ響き誰かが動いた気配がした。
「テメェは本当に馬鹿だな……神だろうと不死じゃねぇのによ」
「安心しろ、テメェを残して死んだりしねぇから」
「……誰がんなこと心配するか、糞奴隷。いい気になんな」
小さく聞こえていた声は、今や囁きに近い。
いっそ甘やかな睦言めいた二人の声と、語る言の葉の内容相容れぬのに、ゾロの疑問はますます膨らむ。
疑問は危惧より好奇心に似て、こらえきれずに重い瞼をようよう押し上げ、うっすらと開かれた視界に二人を映せば。
闇を照らすほのかかな灯りひとつ、揺らめいて、重なる二人の姿を照らし。趺坐す葉柱の膝に跨るよに座り、ヒル魔は、葉柱の胸に身を預けている。
細く白い指先が、つ、と葉柱の首筋撫でた。
艶かしく動く指先は微かな逡巡たたえて見えるが、やがてためらい振り切るよに、葉柱の襟元ぐいっと寛ぎ広げる。
これは夢か幻か。
現と認めてしまうには、あまりにも無残に思えるその光景。
ゾロはただ息殺し、目を離せぬまま葉柱の首筋を見つめていた。
薄明かりの元でも、はっきりわかる傷跡あまた。葉柱の白き肌、無残に赤く染まりて見ゆる。
咬創と思わしき傷は、そればかりではなく、瘴気に爛れているよにも見えた。
ふ、と、ヒル魔の唇から切なげな吐息零れ、忽焉、息荒くなってゆく。
「いいから……ヒル魔……」
声音に滲む慈しみに促され、小さな唸りひとつ洩らし、ヒル魔の腕が葉柱の頭かき抱いた。
背を丸め、かたむけられた葉柱の首筋に、ヒル魔は顔を埋める。間際、煌いたのは鋭き牙。
なにを……といぶかり見つめるゾロの眼差しの先、葉柱の押し殺した苦鳴に混じり、耳が拾ったは、ごくりとなにかを嚥下する音。
血を、すすっているのか。
心利保たねばすぐにも揺らぐ意識のなか、まさか、と、ゾロは目前の光景打ち消さんとするが、濃密に漂い始めた陰の気が、妖魔の性を如実に伝える。
だが、位低きとはいえ、葉柱は神籍に名を連ねたる者だ。妖魔に己が血を与えるなど、正気の沙汰とは思われぬ。ましてや先の二人の会話顧みれば、まさしく葉柱はヒル魔の食料同然ではないか。
ゾロの困惑をよりかき立てるかの如く、ヒル魔は貪るように葉柱の首筋に食らいついたまま。時折零れる鼻にかかったかすかな声、お互いに、情交の際の喘ぎに似て。
やがて、ゆるりと頭上げたヒル魔の白皙ほんのり上気し、満足げな吐息ひとつ、葉柱の首についと伝う血一筋どこか愛おしげに舐めとれば、金赤の双眸、情欲に濡れているよに見える。
「もういいのか……?」
「ああ……」
わずかに掠れた葉柱の声、ぶっきらぼうな応え返して、ヒル魔は葉柱の胸に躯を預けた。
幼子にするよに葉柱の手が金の髪撫でるを咎めず、果たして妖魔はなに思うのか。ゾロには一向窺い知れぬ。
ただ、餓え満たした充足よりも、声に滲んでいたのは悔恨のよな気がすると、ゾロは落ちそになる瞼こらえてヒル魔の様子を窺い続けた。
悔恨であれとは、己の願いにすぎぬやもしれぬ。記憶のなか甦りしは、葉柱が忠誠ゆえに流した血潮。誓いの絹布に染み込んだ紅。
同じ肌から今は妖魔の糧として、さも当然と飲み下されるばかりは、やり切れぬ。
思っていれば、不意に小さな囁きひとつ、ヒル魔の口から吐息とともに零れて落ちた。
「……傷、また増やしちまったな」
「かまわねぇよ、傷のひとつやふたつ増えたところで、どうってこたぁねぇ」
「ちったぁかまえ、糞奴隷。俺の瘴気の所為で、肌なんかぐずぐずになってんじゃねぇか」
神の身であればこそかような軽口たたけるものの、人であったならとうに命絶えていよう。己の牙に肌身噛み裂かれ、魔の瘴気間近に触れて、逃げ出さぬよな愚か者など見たことがないと、吐き捨てるよに言えば、葉柱は小さく笑う。
「愚か者で結構だね。誰が逃げたりするか」
「……奴隷、だからか」
「……是。何度でも誓ってやるよ。俺は永劫テメェの奴隷だ、ヒル魔……」
ヒル魔の問いに葉柱は同じ答え繰り返す。ゾロには幾度も同じこと問うヒル魔の意図は、理解の埒外、葉柱への同情湧くばかりではあるが、しかし。
揺らめく小さな灯りのなか、睡魔に潤む瞳が映すヒル魔の白皙、痛みこらえているかのよにも見える。
奴隷扱いしているのは己であろうに。葉柱の忠誠試すが如き問いかけに、その答えはヒル魔の望むものではないとでも言うのであろうか。
わからぬまま、再び瞼が落ちようとするをこらえ眉根寄せたそのとき、不意に、ヒル魔と視線があったよな気がして、ゾロは慌てて目を閉じた。
二人の醸す空気は秘めごとめいて、見つめていたと知られるは、どうにも気まずい。
気づかれずにいたであろうかと、気配窺っていればしばしの沈黙。やがて、身じろぐ衣擦れの音、わずかに聞こえ。
「なぁ……」
密やかなヒル魔の声、どこか甘えを含んだ囁きは葉柱へか。
気づかれてはおらぬようだとの安堵は、しかし、すぐに後悔へと変じた。
わずかの静寂の後、聞こえてきたのはかすかな水音、乱れる吐息。
自身も身に覚えあるその気配に、思わずゾロは瞼に力込めた。
疑いようのない欲を伴った空気は、次第に濃密になってゆき、身じろぎすらできぬゾロを包み込む。
「……大丈夫なのか?」
「そりゃテメェに聞く言葉だろうが。動けるのかよ」
「俺の心配は無用だがよ……」
葉柱の声もすでに濡れて。けれどわずかばかりの逡巡伝えると、ヒル魔が密やかに笑った。
「あいつらなら、起きやしねぇよ」
「……使ったのか?」
幾分呆れた響きを遮るよに、吐息混ぜ合わす気配。再び聞こえた水音は、先よりはっきりと淫欲たたえて周囲に響く。
「命令しなけりゃ動けねぇか?」
「不是。俺が欲しいなぁ、ご主人様のお許しだけだ」
問う声、返す声、笑み含んで。
どさりと倒れこむよな音に混じり、聞こえた小さな声。
「あ……」
甘く。
「はばし、らぁ……」
早くも、濡れて。
まさかとのゾロの困惑嘲笑うごとく、衣擦れの音、大きく響き、もはや疑いようもない。
周囲の空気、熱を持ち、隠微な物音絶える間もなく。これがあのいけ好かぬ妖魔の声かと思うほど、ヒル魔の洩れ零す小さな喘ぎは、官能たたえてどこまでも甘い。
「あっ……ぅん、も、そこ、いい……早く…っ」
甘える声音に小さな含み笑いの気配、時置かず、くちゅりとわずかな水音聞こえ。
「……今日はいつもより感じやすいな。ゾロ達がいるから興奮してんのか?」
「っせぇ、喋ってる暇あんなら早くしやがれ」
「はいはい、ご主人様はこの舌をご所望で」
「ああっ! あ、あぁ……んっ」
一際大きな嬌声、なにかを舐めすするよな音をかき消し響き、ヒル魔の絶えることなき哇咬続く。
耳を塞ぎたいと願っても、四肢は果てしなく重く、せめて背を向けんと思うても、身じろぎすらままにはならぬ。
見えぬ鎖で縛り上げられているかのような、この感覚。記憶のなか、かすかに覚えがある。
サンジの邪眼か。
思いいたり、ゾロは愕然と息を飲んだ。
彼の道士持つ左の邪眼。見る者の意思奪い、縛り上げる魔族の証。見つめ続ければ命さえ奪うと、道士は決して自らさらすことなき金の瞳。
遥か古に己が血族に混じりし魔族の血、なんの因果かこの目に現れ出たが、同胞からも忌み嫌われた所以。いかに修行積もうとも、己が意のままには依然ならぬ。だがしかし、この瞳ゆえ命永らえたのだから、皮肉なものよと。
道士が自嘲あらわに語ったその魔力を、この妖魔は意のままに操るというのであろうか。
ヒル魔の赤みがかった金の双眸思い描き、ゾロは道士が言、失念していた自分に腹立ち覚える。
金の瞳は、魔族の証。邪眼の呪縛に囚われるなと、囁き聞かされたこと幾たびか。
言われるまでもなく、封印許し道士と道連れ、旅暮らしの由を辿れば、その邪眼がきっかけには違いない。
だが、ゾロにしてみればやはり、きっかけはきっかけにすぎぬ。
ともにあるは、あくまでも己が意思。邪眼の呪縛より、なお強いなにかに囚われ離れられぬからこそ、傍らにいる。
だが、当の道士はといえば、ゾロの意思ばかりとは信じておらぬ風情しきり。ゾロが左目の金の輝き見せろと望むたび、自嘲と不安かすかに漂わし笑むのだから、嫌になる。
けれども、邪眼ともなれば、その苦悩わからぬでもないと思うていたが。
ヒル魔は、邪眼の力、行使するをためらわぬのであろうか。
己の魔力に恐れ抱くことなきが、人である道士と妖魔の違いであろうかと、耳に届く愉悦の嬌声に思考揺さぶられながら、ゾロは懸命に意識を逸らす。
だがしかし、そんなゾロの努力むなしく、情交の気配は更に密となりてゾロを苛んだ。
「ぅあっ! や、それ、や、だ……!」
「なんで? ここが一番好きだろ?」
なにをされているのか、言葉だけで、わかる。
葉柱の笑み含んだ声音が、道士の声と重なる。
焦らし、懇願するまで悦楽与え続ける手指、躯の深み暴きたて。愉悦の高みへ導かんとしているに違いない。
鼓動が速まる。息が荒ぐ。ゾロの幼さ残す躯が熱をおび、気がつけば、揺り起こされた肉欲の疼き、抗いがたきところまできていた。
それでも、一向躯は動くこと敵わず。
「ん……いい……あ、はばしらぁ、もっと……そこ、もっとっ」
「……今日はやけに素直だな。そんな大きな声出していいのか? あいつらが起きたらどうするよ」
「起きねぇ、って、言ったろ。あの糞苔頭が、そんなに気になんのか、よ……あんっ、あ、あぁっ」
きっと、拗ねた声遮るよに、指は官能の源じかに刺激した。道士も使う手管だと、ゾロはままならぬ躯に苛立ちながら、ごくりと喉を鳴らす。
理性も羞恥も、悦楽の波に押しやられ、快楽追うことしかできなくなる。その、抗いがたい愉悦。この肌身が知っている。
「テメェだけしか見てねぇよ……俺のすべては、テメェのもんだ。テメェだけのもんだ、ヒル魔……」
「あ…なら、さっさと寄越しやがれっ、糞奴隷。焦らすんじゃねぇ」
焦らされれば、強請らずにはいられぬ。足を大きく割り広げ、腰揺らめかせ、熱い肉叢この身の奥深くに埋め満たしてくれと、腕が縋る。
固く目を閉じ見まいとしても、すべてわかる。知っている。
「あああっ! はば、しら…はばしらぁっ!」
哇咬高らかに、甘く濡れて。香り立つよに、花開くよに。
わずかの時置き、響くは肉打つ音。淫猥な水音混じり。
あわせ絶え間なく上がるヒル魔の嬌声、時折、葉柱の口からも吐息交じりの小さな喘ぎ零れ落ちて。
もう、嫌だ。
嫌だ、嫌だ、嫌だっ。
喚き逃げ出したい衝動、動かぬ躯。鼓膜から責め苛まれる、逃れようのない欲。満たしてくれる者のいないまま。
己が意のままにならぬ花芽、蜜滴らせだしたを感ずる。無意識に、唇が声にならぬまま、懇願に動く。
して、サンジ……。
触って。口づけて。
して。して。して。
欲しい。
もはや、脳裏に浮かぶのは彼の道士の姿ばかり。
甘やかす手指、ゆるりと絡め。舌先胸の突起、味わうよに舐め転がして。逸楽の際の際まで押し上げる甘い苛み、時間をかけてじっくりと。懇願し縋りつけば、柔らかな笑みや甘い囁きうらはらに、穿たれる楔は熱く激しく。
今すぐ欲しいと、願うのに。
瞼の裏に涙滲み、ゾロはきつく唇噛み締めた。
葉柱のよに、永劫傍らにあると誓ってくれたならば、この胸焼く執心、その名で呼ぶも敵おうものを。
道士はいつでものらりくらりと、睦言めいた言葉は唇乗せるくせに、決してゾロが真実望むを誓ってはくれぬ。
ヒル魔の喘ぎに、隠微な情交の音どもに、快楽望むと同等の悋気腹立ち、湧き上がるを止められず。
「あ、あぁ、はば、しらっ! も、駄目……もう、ああっ!」
達したいと切に願うと同時、もっと続けと願う心、相反して。我を忘れ、苛む相手に助け乞い縋るさま、目に見えるよであれば、甘く囁く応えもまた、聞かずとも覚えある。
「ああ、いくらでもやるから……。我慢しなくて、いいから……ヒル魔……」
駄目、だ。もう……駄目、だ。思いつつ。
一際高く響いた嬌声と同時、ゾロもまた、観念のみで精霧散した。