犬も食わない

セレブな無惨様と貧乏苦学生な義勇さん(のち、高校体育教師)から始まる現パロむざぎゆ。なんだかんだとラブラブな二人です。

犬も食わない

青に溺れ、赤に染まる

無惨が初めて彼を見かけたのは、ほんの気まぐれで視察に行った子会社の倉庫でだった。無惨が経営する商社は多くの子会社を抱えているが、無惨自身がそれらを視察するなどめったにない。だというのに、その日にかぎってアポなしで視察をなんて考えたのは、気ま...
犬も食わない

後朝

その夜のことを、無惨は、人生最良の夜と言ってやってもいいと思っている。少なくとも、義勇の安アパートに転がり込んだ後から、朝目覚めるまでの出来事に関しては。 正直に言えば、人生初の自転車の二人乗りや大衆食堂だって、いつか楽しく幸せな思い出とし...
犬も食わない

ケセラセラ

体育教師冨岡義勇には、謎が多い。 入学式で壇上に並んだ教師陣のなかで、とにかく目を引く美貌にまず新入生は驚き、その後、そのいでたちが教師としては規格外であることを知り、騒然とする。 私立である学園の生徒数はそれなりで、マンモス校というわけで...
犬も食わない

いと度し難き至高のブルー

好きだのなんだのといった言葉もないまま、無惨と義勇が世間一般で言うところの恋人という関係に落ち着いたのは、もう五年以上も前の初秋のこと。 そのころ義勇は大学一年で、無惨は二十代にしてすでに多くの傘下を抱える総合商社の社長だった。まったく接点...
犬も食わない

夏に降る雪

「おい、海に行くぞ。次の休暇はあけておけ」「は?」  無惨が勝手なのは今に始まったことではないが、今回のはちょっとばかり度が過ぎる。義勇の眉間に刻まれたシワは、いまだに取れずにいた。「いつまでむくれているつもりだ?」「……寝不足」「だから少...