こっそりと不定期で

ぎゆたんスロットからのSSを書いてみたりしようかなと。Twitterじゃないので140字SSではなく、あくまでも小話で。

ではさっそく……。

で、今日の結果。

朝露の草原で

あなたが好きですと笑う

同棲ぎゆたん

……ほほう。

 珍しく一緒になった任務明け。昇る朝日に照らされて、ホッと肩の力を抜く炭治郎を見つめた。数刻前までの行為の影響があってはと、少し心配していたが、頑丈に出来ているとの本人の言に偽りはなくなによりだと、義勇もわずかに安堵する。
 任務の報にともに走り出た場所も同じなら、帰る場所も同じく水屋敷だ。稽古の後に禰豆子のいない蝶屋敷に帰るのは面倒だろうとは、言い訳だ。ろくに言葉にしてやらぬままなし崩しに始まった同居生活を、まだ子供と呼んでも差し支えない炭治郎は、どう理解しているのだろう。目合う意味すら分かっていないかもしれぬとは、流石に侮りすぎだろうか。
 朝露に濡れた下草がゆれて、青臭い緑の匂いが血臭を凌駕し鼻をくすぐった。鼻の利く炭治郎にはきつかろうと、刀を鞘に納めて踵を返しかけた足は、炭治郎の発した笑みまじりの声に止まった。
 あなたが好きですとこともなげに口にして、炭治郎は清々しく笑う。義勇さんの心がどうでも、俺は好きだってことを知っておいてもらおうと思って。朝日よりもまばゆい笑みは、それでもかすかに唇が震えている。
 朝焼けに赤く染められた光景に、血の色よりも意志の強い瞳の色を思い浮かべるようになったのは、いつからか。
 言葉を探すよりも手っ取り早いと、抱き寄せれば、とまどうように見上げてくる。寝起きをともにするどころか、同衾までしているというのに、炭治郎には己の恋慕などまったく伝わってはいなかったらしい。
 口下手な己の自業自得と思わぬではないが、いささか腹立ちもする。恥ずかしいとか照れくさいだとか、知られたくない感情にはすぐに気がつくくせに。
 子供のようにふてくされたくなる自分を持て余し、どうしてと問う気配を見せた唇を、少し乱暴にふさいでやった。絡める舌にあらがう子供を抱きすくめ、この唇を離したら、好きだと告げてやろうと決意する。
 言葉が下手な自分には、精一杯の一言を聞いたなら、炭治郎は明るく笑ってくれるだろうか。

それとも、朝露よりも綺麗な涙を、はらりとこぼすのだろうか。