SS~短編

SS~短編

内緒の大好き

くちゅんっ。 「ん?」 なんだか懐かしいような音が聞こえて、つい辺りを見まわした。六太のくしゃみみたいな音。小さい子が迷い込んだんだったら大変だ。 なにしろ今は柱稽古の真っ最中。竹林は立ち入り禁止にされてるけど、小さい子が知らずに入ってきち...
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恋文

夜明け前になって帰ってきた義勇は、げっそりとした顔で文机に向かうなり、一度も立ちあがることなく筆を走らせている。 ときどき筆を止め、考え込むようにわずかに上向いたり、思わずといった具合に髪を掻きむしったりするが、それでも文机の前からまるで動...
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過ぎる時、変わらぬ想い

近所に竈門ベーカリーというパン屋ができたのは、義勇が中学に入学した春だった。 初めての着慣れぬ学ランに、気恥ずかしさと誇らしさを持て余しながら、姉と一緒に入学式から帰る道すがらで、花輪の飾ってあるその店に気づいた。「いい匂い。ね、買っていこ...
CHALLENGE

つま先に媚薬(お題:23つま先)

炭治郎が、義勇に稽古をつけてもらえるようになってから、三日が経った。 稽古内容は一言で言えば鬼ごっこだ。ただし、迫ってくるのはつかまえようとする手ではなく、鋭い木刀の一撃である。広大な竹林のなかで目まぐるしく攻守が変わる鬼ごっこは、息つく暇...
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幸食健美

「それじゃ、明日からよろしくお願いします!」 ぴょこんと頭を下げる炭治郎に、義勇は小さくうなずいた。えへへとはにかみ笑う炭治郎は、いかにもうれしげだ。その笑みを見ていると、義勇の胸の奥にもほわりとした温かさが宿る。 付きまとわれるのには閉口...
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恋は緩やかに

お題:いってきますのチューをしている義炭 ※無自覚両片想いからの自覚。義勇さんのご両親を捏造しています。800字2/24分。  出がけに義勇が炭治郎の顔に唇を寄せたのに、特別な意味はなかった。 炭治郎が水屋敷で起居するようになってから、そろ...
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尽きることなく満ちて、増えて、繋がってゆけ

お題:なし ※ファンブックネタ。書いてる本人が義炭と思って書いたので義炭。でもカプなしに近いです。あえて言うなら宇嫁w 800字2/6分  義勇は一度だけ、聖母像を見たことがある。隊士になっていくらも経たないころのことだ。 その日、義勇は心...
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おいしさの秘訣は恋心でした

お題:義勇さんが浮気するフリをして炭治郎の反応を試している義炭。800字2/3分 「で、どういうことだったんです?」 責めるつもりなんて炭治郎には毛頭ない。でも不思議だったから聞いただけのこと。 事の起こりは他愛ない。大好物の鮭大根を、義勇...
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春の猫

お題:だって、愛しているから(アンケートにお答えくださった方、ありがとうございました)※義←炭からの義炭 2/22 猫の日  義勇が傘を片手に竈門ベーカリーにやってきたのは、炭治郎が、看板をしまい込もうとしたときだった。「あ、義勇さん。いら...
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検索履歴はブラックボックス

炭治郎の好みはわかりやすいようでいて、さっぱりわからない。「ね、面白そうでしょ?」 映画雑誌のページを開いてみせる炭治郎の顔は、いかにもワクワクと輝いていて、大変愛らしいと思う。思うが、同意はいたしかねる。「……だいぶ、前衛的だな」「そうで...