SS~短編 Hush a Bye Baby(ロング&炭治郎おたおめvr.) 眠い。半ば眠りながら歩いてるぐらい、とにかく眠い。 昼休みの喧騒すら意識の片隅をかすめるだけで、炭治郎の頭には「眠い」以外の言葉はろくに浮かばなかった。誰かに呼びかけられるたび反射的に笑顔を向けるのは、長男として培ってきたやせ我慢の賜たまも... 2022.07.15 SS~短編義炭
SS~短編 ずっと、ずっと、いついつまでも 今日はどうにか十一時には帰宅できた。いや、それでも遅すぎなのに変わりはないけれど。湯船に足を入れた義勇は、われ知らず深く嘆息した。 そろそろ日付も変わるだろうか。疲れた。いや、疲れ果てている。温かな湯に包まれると気づかぬようにしていた疲労が... 2022.02.08 SS~短編義炭
SS~短編 押されて引いて、恋愛計算答えはいつか 「あの……ドキドキしますか?」 と、言われても。義勇はどう答えたものかと、わずかに眉根を寄せた。 ドキドキの意味によっては、はい、だ。つま先立ってプルプルしている炭治郎の足を見ると、どうにもドキドキする。もっとふさわしい言葉で言うなら、ヒヤ... 2022.01.13 SS~短編義炭
SS~短編 Please cry baby 卒業式後に義勇に告白したとき、炭治郎の顔はまるで決闘でも申し込むかのようだった。 俺も好きだと言われたときの顔はといえば、鳩が豆鉄砲を食ったようで、すぐにグシャグシャに泣き崩れた。涙だけでなく鼻水まで大盤振る舞いの大号泣だ。めったに着られる... 2022.01.11 SS~短編義炭
SS~短編 甘くても、苦くても、きっと一番おいしい 元日のテレビ番組は、炭治郎にとってはさして興味のないものばかりだ。もともとテレビを観る習慣はほとんどなくて、茂や六太につきあってアニメを一緒に観るくらいなものだから、タレントにだって詳しくない。 義勇の部屋にいるときはなおさらで、義勇も観る... 2022.01.01 SS~短編義炭
SS~短編 さよなら、さびしんぼ その日、鴉が運んできた文ふみに炭治郎は目を輝かせ、ついで、少しだけ泣いた。 文に書かれた文言は、一日きりの休暇を告げるものだった。それは、涙で文字がぼやけて見えるほどの感謝と歓喜を、そして、わずかばかりのやるせなさを炭治郎に与えた。 夕日... 2021.09.01 SS~短編義炭
SS~短編 神のまにまに恋しかるべき 出現は途絶えても、鬼の噂がまるきりなくなったわけではない。行方不明や食い殺された遺体の発見があれば、隊士が調査におもむくことはままあった。 人選は、このところ水の呼吸の兄弟弟子に集中している。水柱、冨岡義勇と、同門である竈門炭治郎。柱稽古に... 2021.08.30 SS~短編義炭
SS~短編 子供の領分、大人の領域 義勇さんに稽古をつけてもらうようになってから、一緒に食事に行くことも必然的に増えた。 柱である義勇さんが選ぶお店は、きっとお高いに違いない。初めて食事に行くぞと言われたときには、そんな不安がちょっとあってドキドキしたりもしたけれど、義勇さん... 2021.08.28 SS~短編義炭
SS~短編 春のうららの 里山の外れの竹林に住む鶯の番は、ちょっと変わっているとここらの鳥たちのなかでは有名だ。なにしろどちらも雄なのだ。鶯は一夫多妻制で縄張りのなかにいくつも巣があり、それぞれにお嫁さんが子育てしているのが常だけれども、その番はお互いしか目に入って... 2021.04.25 SS~短編義炭
SS~短編 繰り返す初めましてのその先の 炭治郎は滅多に緊張することがない。緊張しないわけではないが、いつだってなるようにしかならないとすぐに腹を決めるのが常だ。 少なくとも、手料理をふるまうのに緊張したことなど、一度もなかった。 「えっと……どう、ですか?」 緊張に固くなる体を... 2021.04.02 SS~短編義炭